第22話【四月二十八日(午後)~都祭真理~】
上原香織が教室に戻ってきた。
黙って席に戻り、カバンにお弁当の包みを戻す。いつもの上原香織。
上原香織は午後も休み時間のたびに、女子を映画研究会に誘っては断られていた。朝のゲロっぷりを見ている男子は、上原香織が歩いていくと公園のハトみたいにさーっと散っていく。なかなかの学習能力。
「ゾンビにならない?」
同じ言葉を繰り返すが面倒くさくなってきたのは理解できるけれど、そこまで省略するとイエスという人は絶対にいないわ。省略するならゾンビを省略すればいいのに、どうしてもゾンビは譲れないらしい。
そして放課後を待たずして、クラスの女子全員に断られた。
ホームルームが終わり、放課後。明日は昭和の日。日本国民的にはクリスマス以上にひゃっはーして欲しい休み。二千年前に死んだ神様の御遣いの誕生日より、四半世紀前に崩御した神様の誕生日の方がどう見ても格上。
クラスが開放感に包まれる。
振り返ると、上原香織はもう教室から姿を消していた。
私も、ロッカーから大きな袋を取り出して服飾文化研究会の部室に行くことにする。袋の中身は、ドレープシャツとキュロット。それとキュロットは裾が丸くカットしてあるのがかわいい。ちゃんと肩紐のないインナーも入ってる。
楽しみ。
なつに着せるのが。私は着ないわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます