第0079話 'Round Midnight……別離
ノックしたのはユリコだった。
ドアの前でもじもじしている。
「ユリコ、どうした?」
「えーと……あのぅ……そのぅ……。きょ、今日はありがとうね。助けてくれて」
昼間、ブラックドラゴンの魔の手から助けたことを言っているのだろう。
だが、あれは俺の
「いや。あれは俺の所為だ。怖い思いをさせちまって本当に申し訳ねぇ」
「うぅんぅん。私たちはシオン神聖国から派遣されて来たんだもん。用心するのは当たり前よ。逆の立場なら私だって当然そうするもん。だから気にしないで」
ユリコを加護する際に掛けておいた保険に理解を示してくれる……
彼女が俺やハニーたちに危害を加えようとすると一瞬ですべての能力を失って、ただの平均的な女性になるというあの保険は当然だと言ってくれる。
(→第050話後半参照。)
「ありがとう。そう言ってもらえると少し気が楽になるよ」
ユリコは照れながらもにっこりと笑う……
「「………………」」
無言……き、気まずい。
昼間、なんとなくあの場の雰囲気でユリコとキスをしてしまったが、あの場面を思い出してしまう……恥ずかしい。何か言わねば……
「そ、そうだユリコ! ちょうど今、昔よく一緒に聞いていたジャズを聴こうかと思っていたところなんだがお前さんも一緒にどうだ?
コーヒーでも飲みながら……どうだい?」
あ……マズい! 日本人だった時は結婚を前提に付き合っていたので、ついついユリコも嫁のようなつもりになってしまっていたが、あのキスは……不倫?
『う、うわぁ~。完全にアウトだよな! あの時はつい流れでというかなぜか気が付いたらキスしちまってたんだよなぁ~。あれはマズかったよなぁ~』
部屋に入れるのは……やっぱりダメだよなぁ。早早にお帰り願った方が……
「あ、ごめん、やっぱり……」
「へぇ~。ジャズっ! 聞きたい! でもまさかこの世界でジャズが聴けるなんて思わなかったわ。うれしい! あ、コーヒーは私が入れるね!」
「お、おう。頼む」
って……ダメじゃん!
いや……ジャズを聴きながらコーヒーを飲むだけだ……せ、セーフだよな?
「あれ? コーヒーメーカー、新品じゃない? 使ってないの?」
「ああ。いつもはレプリケーターで生成しちまうからなぁ。
そういえば俺はまだ一度もそれを使ったことがねぇな」
「へぇ~そうなの……
えーっと。粉はどこ? あ、待って! あったわ! キリマンジャロね!?
あれ?粉じゃないのね? 豆から挽くのね? う~ん。いい香り!」
ユリコはコーヒー豆をミルで
「見たところステレオもラジカセも無いようだけど?どうやって音楽は聴くの?」
「音楽を聴いたときの脳内信号を再現する方式だからプレーヤーは
ユリコはミルを回す手を止めて、下唇に右手人差し指をあてながら小首を
「え?それじゃぁ二人で聴くときはどうするの?」
「念話回線を
彼女はミルで挽いたコーヒーの粉と水をコーヒーメーカーにセット。スイッチを入れると台所からリビングにあるソファーへと……そこに座っている俺のもとへとやって来て隣に腰を下ろした。
彼女からはコーヒーとは別のいい香りがほわっと薫る。
ち、近い……肌が触れ合う。
学生時代はこれが当たり前だったが、久々にこうして並んで座ると緊張する。
数十年前に死んで、つい先日復活したばかりの彼女は、コールドスリープ状態でいたようなものだ……
だから、彼女にはとっては数日ぶりにこうして俺と並んで座ったような感覚なんだろうな。ごく自然に俺に寄り添っている。だが……
俺にとっては数十年ぶりのシチュエーションだからなぁ……どうしても緊張してしまう。
「で、何を聴くの?」
「何がいい?」
「う~ん……あ、ほら。ジャズ研の小野くんから
よく覚えているなぁ。って、そうだった……彼女は20歳で亡くなり、その時に一旦、彼女の時間の流れは止まったんだもんな……
そういえばそうだったな。あの頃俺がハマっていた歌だったな。
ユリコとも一緒によく聴いていたもんなぁ……
「
お前さんが亡くなって……聴くのがつらくてずっと聴いてなかったよ……」
コーヒーのいい香りが
「夜聴くのに打って付けじゃない? しっとりとしたいい歌声よね?
ね? 私も生き返ったことだし……その曲にしない? 久々に私も聞きたいの」
「ああ、分かった。それにしようか」
ユリコとの思い出が蘇ってしまうため、ずっとつらくて聴けなかった曲だった。
それがこうしてまた彼女と一緒に聴くことができる……
「……ああぁ……お前さんと再会できて本当によかったぁ……」
涙で視界が
……コポコポと音がしている……まだ入ってない。
コーヒーのつまみに合いそうなナッツ類を数種類生成して小皿に盛り、ユリコが待つソファーへ戻る。
ナッツ類が入った小皿はソファーの前のガラステーブルの上に置いた。
「Ella Fitzgerald のもあるけど、Julie London の方でいいか?」
「一緒によく聴いていたのは Julie の方だったわよね?」
「ああ。」
「じゃ Julie がいいな」
「分かった。それじゃ念話回線を繋げ……おっと。コーヒーが入るのを待つか?」
「そうね。その方が落ち着いて聴けるものね」
「……あ、そうだ。シンは Nat King Cole も好きじゃない?
彼はこの曲、歌ってないの?」
「いや、歌っているんだけどさあ……どうも語尾が気になってなぁ~。
なんか好きになれねぇんだよなぁ~。
『チュッ』とかいう舌打ちしたような音がやたら耳障りで……
後で聴いてみるか?」
「うん聴いてみたいな。 それと彼の歌もあるんだったら……
Fly me to the moon だっけ? あれもあるかなぁ? あったら聴きたいな~。
あの歌もあなたが好きな歌よね? 私も大好きな歌なのよ。うふふ」
「いいよ。その歌のデータもあるから一緒に聴こう」
「嬉しい! 私……結構あなたから影響受けてるね。うふ。
なんかあなたが好きなものはみんな私も好きなような気がするわ……うふふ」
そう言いながらユリコはとても嬉しそうに微笑んだ。
◇◇◇◇◇◇◇
「どうした?」
「……うぅんうん。この歌の歌詞が心に
なんか今の私の気持ちを表しているようで……グッときちゃった。うふふ」
ユリコは涙を
Julie London の声とメロディーが
「最近真夜中になると色々思い出しちゃってね。あなたとの楽しい思い出ばかりが
私気付いたの。ブラックドラゴンの一件でね。私にはあなたが必要だって……
私の想いはあなたと共にあるんだなぁ……ってね。
笑わないでね? もうあなた無しの人生は考えられないの。
あなたがいないと考えるだけでおかしくなっちゃいそうなの。」
「え?」
「ね? この歌の歌詞とよく似ているでしょ? 私の気持ち……」
俺が持つ翻訳機能を使って歌詞の内容はすぐに理解できた……
彼女の言った通りだった。今彼女が語った内容に似ている。
「ねぇ……シン。私はあなたのことが好きです。愛しています。
この気持ちはどうしても
でも、私はハーレムはイヤ! どうしても許せないの……
ねぇ、シン。私だけを愛して。お願い……」
「すまねぇがそれは無理だ。お前さんだけを愛することは無理だ。
俺はお前さんと同じくらいハニーたち全員を心から愛している。
心の底から全員を愛しているんだ。この気持ちに
彼女たちも全員俺を心から愛してくれている。その気持ちを裏切るようなことは俺はできねぇし、絶対にしねぇっ! だから……」
「どうしてもダメなのね?」
「ああ。申し訳ねぇが……無理だ」
「そっかぁ……。うう……分かってた。シンはきっとそう言うって……
でも……ううう……ごめん……部屋に戻るね。おやすみ……うう……」
「ユリコっ!」
ユリコは左手で口と鼻を
翌朝。ユリコの姿はどこにもなかった。
『自分の心を見つめ直す旅に出ます』というメモを残して……
彼女は俺のもとを去った。
心が張り裂けそうに……痛い……
◇◇◇◇◇◇◆
この世界での女性のひとり旅はきつくてつらいものとなるだろう……
この世界にはクソ野郎が多いし心配だ。それで……
俺はユリコには気付かれぬようにミニヨン2体を護衛として貼り付けておいた。
彼等は
◇◇◇◇◇◆◇
朝食後の食堂で、昨日ブラックドラゴンから解放した女性たちと話をしている。
彼女たちがどうしたいのかを聞いて、できるだけ希望に沿いたいと考えている。
ブラックドラゴンに
あのクソドラゴンはすべてのヒューマノイド種族から女性を攫ってきたようだ。
シュファイ〔16歳。エルフ族〕、
チャー〔15歳。人族〕、
ミロン〔16歳。うさぎ族〕、サザリ〔17歳。サル族〕、
ミュムイ〔17歳。ドワーフ族〕、
エオボ〔19歳。魔族〕、
ジュギャ〔21歳。ダークエルフ族〕
この世界では15歳以上が成人と見なされるんだが……15歳の子もいるのか?
若いよなぁ……このダンジョンで妻になったラヴィッスと同い年か。
ラヴィッスというのは、第1階層でスライムに食われかけていた女性だ。
彼女も15歳である。若い。
ハニーたちもみんな若いし、ここが日本だったら大変なことになるよなぁ……
「えっ!? お前さんたちは全員が
「はい、そうです」
シオンの件もあり、昨日はこの女性たちとはろくに話ができなかったのだが……
まさか彼女たちも神殿神子だったとはなぁ……驚いた。
シオン教めっ! 俺への嫌がらせが徹底していやがるなっ! 許せんなっ!
「あ。それでここからが本題なんだがな。お前さんたちが望むのなら……体内外を完全浄化し、身体を全盛期の
「あのう……全盛期に戻るというのはどういうことでしょうか?」
細胞って言葉は知らないだろうしなぁ……
「えーと、ジュギャ。なんていうか……お前さんが最もピチピチしていたというか輝いていた頃の身体に戻してやれるってことだ。
お前さんたちは若ぇからピンと来ねぇかも知れねぇが……
まあ、若返らせるってことだ。 大抵は16、17歳くらいに戻る。
チャーのように現在15歳だと多分年齢はそのままだろうがな」
「「わ、若返らせて下さいっ!」」
すごい勢いで身を乗り出しながらエオボとジュギャが叫んだ。
若返るという言葉が決め手だったようだ……
まだ19歳と21歳だろう? 若ぇのになぁ。やっぱり女性なんだなぁ……。
「あのう~、完全浄化というのは?」
「それはな、チャー。身体の内外の
例えば今回の場合なら、ドラゴンの痕跡やドラゴンの子を妊娠してしまっているならその子も取り除かれる。まあ多分まだ妊娠はしてねぇだろうがな」
「生娘に戻るというのは?」
「ミュムイ。性交渉を一度もしたことがない状態に戻るってことだ。
あのクソドラゴンに乱暴される前はヴァージンだったってことだから……
肉体的にはドラゴンに乱暴される前の状態に戻るってことだよ。」
「ドラゴンに乱暴された記憶は消せないのですか?」
「残念ながらシュファイ。それはできるがやらねぇ方がいいから、行わねぇんだ」
「なぜです?」
「記憶の一部に
結局、全員が完全浄化と完全修復を希望した。
「あのう私たちのように男に
や、やはりそう来たか?
この子たちも神子だから、そうなるだろうとは思ったのだが……
「そんなことはねぇよ。それにお前さんたちは穢れてねぇからな!
運悪く事故にでも
「じゃぁ!私たちでも后になれますか!?」
「ああ。もちろんだ。本当にお前さんたちが心から俺の嫁になりてぇのなら、俺は大歓迎だぜ。はっはっはっ!
だが、本当に心の底から俺の嫁になりてぇって言うんならだぞ!? いいな?」
"なりたいですっ!"
うっ。二つ返事か!?
ま、まあみんなすごい美人だし……魂の色も全員が"スカイブルー"だしな……
「よ~し! みんな! ようこそ我がピチピチギャルハーレムへ! ははは……」
ああ……ダメだ。パッシブスキル"魅了"&"惚れっぽい人仕様"が……
好きだと言われるとすぐその気になってしまう……大丈夫なんだろうか俺?
「ジー、ありゃダメっす。
このままだとやはり嫁は1000人以上になりそうっすね?」
「7倍返し」
「え?どういう意味っすか?」
「ユリコが去って。7人来た。7倍。もう勝手にしてって感じ」
「あははははははっ!」
「うちらがここに来たとき何人だっけ?」
「何人ってラフちゃん。ダンジョン攻略に参加した嫁の数ってこと?」
「そうそう。ダーリンとオークドゥを除いてなんだけど……ミューイ、分かる?」
「あたしたち4人にぃ~……エルフさんたちにぃ~……えーと、9人かな?」
「で、彼女たち新メンバーを入れると何人になったの?」
「えーとぉ……ユリコさんが抜けたからぁ……」
ノアハ、ザシャア、ウェルリ、ジー、ソニアルフェ、
シェリー、ラフ、ラヴ、ミューイ、
ヴォリル、ミョリム、ラヴィッス、
マルルカ、マイミィ、
リガーチャ、
スサク、リクラ、トフル、
翠玉、バジリドゥ、ディープレッド、ビィヴィ、
〔新加入〕
シオン、
シュファイ、チャー、ミロン、サザリ、
ミュムイ、エオボ、ジュギャ
「……シオンさんも入れるとして……30人! なんと! 30人だよっ!」
「えーーっ!? ミューイ!? 本当に!?
このダンジョン攻略中に21人も増えたのっ!?」
「それにラフちゃん。なんかさあ、チラッと聞いた話によるとね。ニラモリアでもひとり
「
「ぷぷぷ! ジー。だめよ! ダーリンに聞こえたら怒られるわよ!」
「あははははははっ! おかしいっす! ははははは」
はぁ~。そんな大きな声でしゃべっていたら聞こえるって。
精力絶倫夫……はぁ~~。
「えっ!? う、上様は精力絶倫夫なんですか? 私でお相手できるかしら?」
ほらぁ~ジーよ。彼女たちにまで聞こえているじゃないかぁ!
ダークエルフ初の嫁、ジュギャが顔を真っ赤にしてもじもじしてる……はぁ~。
その後、新しいメンバー7人にも
俺のハーレムはガンガン拡大するっ!
だが、なんとなく
ああ……Nat King Cole の "Autumn Leaves(枯葉)" が聴きたくなる……
◇◇◇◇◇◆◆
「上様。ダンジョンマスターの部屋等々の情報を外部からアクセスして得るために必要なパスワードをお送りします。ご
ダンジョンの管理システムに"管理者"としてアクセスするためにはプライマリーキーデータ、つまり、魂のプライマリーキー値の照合が必要となるのだが……
この照合というのはダンジョンマスターの部屋に入らないと行われない。
外部からダンジョン管理システムにアクセスして情報を引き出すにはパスワード認証をパスしてからプライマリーキー値の照合を受ける必要があり……
シオンが送ってくれたのは、その外部からのアクセス用のパスワードである。
(→第053話終盤参照。)
シオンから送られてきたメッセージには以下が記されていた。
{69D9B5A4-A946-427B-86D1-A34DF1A0B176}
ん? GUID( Globally Unique IDentifier。グローバル
どう見てもレジストリ形式の 128bit のハイフン付16進数だ・よ・な?
さすがにこんなのは覚えていられないなぁ……
今度外部からダンジョン管理システムにアクセスすることが必要になるまで……
「シオン。ありがとう。
それじゃぁ今から俺がこのダンジョンのマスターになるぞ? いいな?」
「はい。もちろんでございます」
「管理システムに命令する。マスター変更! 新しいマスターは俺だ!
承認しろ!」
【管理者権限の有無を確認……プライマリーキー値が惑星管理者と一致。
管理者権限を有することを確認しました。
ダンジョンマスター変更要求を承認。
本ダンジョンの管理権限が惑星管理者に返還されました】
返還? そうか。元元は俺の管理下にあったからか?
ん? まだ続きがあるのか?
【原状回復処理を開始します……
第1フェーズ。只今から探索者を除去します。
ダンジョン内の生命体反応を確認……第1から第6階層までに12名のヒューマノイドの生命体を確認しました。ダンジョン外へ強制転送します……完了。
ダンジョン管理システム室外のヒューマノイド生命体はすべてダンジョン外へと転送しました。
第2フェーズ。魔物を排除します。
招喚された魔物を元いた場所に戻します……完了!
生成された魔物を全消去します……完了
第3フェーズ。地形・区画操作をリセットします。
旧マスターにより行われた区画割をリセットします……完了!
原状回復処理はすべて完了しました】
日本では貸し
不動産賃貸と違って旧マスターが自己負担で行わなくてもいいから楽か?
しかし……面倒くせぇ~。居抜きでもらってチョコチョコッと手を入れることで新しいダンジョンとしてオープンさせようと思っていたが……ゼロから設計し直さないとだめなのか……うわぁ~。こんなのやってられんなぁ。
>>マスター。
ダンジョン管理システムのメニューにはオートジェネレート機能があります。
ダンジョン管理システムのAIにすべてを任せることも可能です。
<<なるほど。ありがとう。全知師。
そうか。そういうこともできるのか? でもなぁ……
第1階層は何色かのスライムがランダムに天井から降ってくる3次元ぷよぷよ。
第2階層は冒険者をくすぐり倒すこちょこちょ触手植物エリア。
第3階層はオークと戦ったら即死退場。オークと友達にならなきゃ先に進めない『オークと友達になろう』エリア。
……等々。色々と考えていたんだがなぁ……
ん?死に戻り設定の有無?……なになに? ほう?
ダンジョンで死んだ場合に蘇生させてからダンジョン入り口前に放り出す機能もあるのか? こりゃぁいいな。 これなら安心して冒険者に開放できるな。
ほほぉぅ。ダンジョンマスター変更をロックすることもできるのか。ロックしておけば今回のようにシオン教徒に乗っ取られて
よし! ダンジョン管理システムのAIとやらにここを丸投げで任せるか!
マスターとしてこのダンジョンを運営し、周辺にダンジョンで栄える町を作って発展させるのも面白そうなんだが……
他にも色々とやらねばならないからなぁ……ふぅ。
子供が生まれて……子育てが
◇◇◇◇◆◇◇
「だ~りんっ! おかえりなさ~いなのぉ~!」
『おかえりなさーーいっ!』
「お帰りなさいませ」
「おかえりなさいですぅ」
「わぉ。おかえりなさーーい!」
攻略したダンジョンについては管理システムのAIに任せ、俺たち全員で神都へ戻ってきた。マンション1階のホールに転移して来たのだが……
キャル、シャル、シェルリィ、ラティ、そして、ローラが俺に飛びついてきた!
「だ~りん せいぶんのぉ~ きゅうしゅう かいしなのぉっ!」
"おーーっ!"
『おーーっ!』
スリスリスリスリ……
俺に抱きついてきた子供たちがスリスリしだした。 は・は・は……
「あのう……上様……」
オークドゥが話を切り出せなくて困っている……
分かっているぜ。 彼女持ちよ!
早くかわいい彼女に会いたいんだろう? ふっふっふっ!
「おう。オークドゥ。いいぜ。早く彼女のもとへ行ってやりな。
彼女、心配しているかも知んねえからな」
「はいっ! ありがとうございます! ではっ! 失礼します!」
オークドゥはまるで飛んでいくかのようにすごい勢いで出ていったぜ。ははは。
◇◇◇◇◆◇◆
いやぁ~、それにしても嫁さんが増えたなぁ~。
これじゃぁもう絶対にマンションも建て替えないとダメだよな。
おっ! いいことを思いついたぞ! ふっふっふっ!
この方法ならハニーたち全員と同居しようが誰からも文句は言われまい。
やれ人族を優遇しているだの、特定の種族を
どのヒューマノイド種族からも絶対に文句は出まい! これは妙案だぞ!
早速シオリの意見を聞いてみよう!
そう思ってシオリのもとへと向かおうとすると……
「上様。ちょっとお願いが……」
「ん?シオンか、どうした?」
「はい。あのぅ。私の後に人族担当になった
「うん。なんだい?」
「管理助手たちはみんな……そのぅ……上様の后になったとか?」
「ああ。確かになってくれたよ……って、ああっ! そうか。大丈夫だぜ。無理に后になれとは言わねぇから安心しろ。 そう言われるんじゃねぇかと思って心配になったんだな? 大丈夫だよ」
「ち、違うんですっ! 逆ですっ! なりたくないんじゃなく! 私もなりたいのですっ! して下さい! お願いしますっ!」
へっ? 逆? そうか……そうだよなぁ。
仲間外れにされているみたいになってしまっているもんな、この子は。
管理権限も
「お前さんが本心から俺のことを
その点は大丈夫か? よく考えてからの方がいいんじゃねぇのか?」
「わ、私は数十年上様一筋。ずっと操を立ててきたのです。この気持ちにゆらぎはありません。お願いします!」
そうだったな。外見が若いからどうも数十年と言われてもピンとこないな。
「そうだったな。悪ぃ……無用な心配だったな。 ありがとう。嬉しいぜ!
改めてよろしくな、シオン」
「はい……ううう……うわぁーーーん! う、嬉しいよぉ~」
シオンは周りの注目を一身に浴びている……
「お、おいおい。泣くなよ。よしよし。数十年、ひとりでよくがんばってきたな。
シオンをギュッと抱きしめた後、頭を『よしよし』といった具合に
はっ!? ジーとウェルリが見ている!?
その後はお決まりのパターンだ。
全ハニーをハグして『よしよし』をすることになった。
い、嫌じゃなかったぞ! 本当だぞ!
逆に嬉しかったのは事実だ。
ダンジョン攻略のために離れ離れになっていたハニーたちと愛情の確認をし合うことができる良い機会だったんだから……
ん? なんか妙案を思いついたんだよなぁ……なんだったかな? あれ!?
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