24.二人の少女は僕の唾液が欲しいと宣った。
「いや、駄目だよ、そんなハレンチな事は」
そうである。こんなくたびれたおっさんの唾液を少女が欲しがるなんて、倫理的にあってはならない事だ。
「良いじゃない。あの学校みたいな結界で、もっと凄い魔力供給を・・・」
僕は菜野葉が言いかけた口を手で塞いだ。
「えーっ、えーっ!何やったんスか?凄い魔力供給って、もしかして、最後までの魔力供給だったんスか?」
興奮気味にミクちゃんが問いかける。
横に居る梓ちゃんも、顔を赤らめながら真剣そうな目で僕らを見つめている。
「うんうん、そうよー。魔力、とってもたっぷりで、暖かくて気持ち良かったんだからーっ」
菜野葉ちゃんは僕の手を引き剥がして二人に言った。
その途端、二人は顔をさらに赤らめる。
「羨ましいっ!羨ましいっス!直の魔力っ!」
「良いなあ、ズルいなあ、菜野葉ちゃん。私も欲しいよ。救世主様の直の魔力・・・。」
二人は舌を舐めずった後に僕を見る。
「・・・とりあえず、救世主・・・、あたしとまどか、魔法使って魔物倒したから、魔力補給して欲しいっス・・・」
ミクちゃんは僕の両肩を掴んで言う。
その目は獲物を前の猛禽類の様に、僕を逃がさない、と言わんばかりの眼だった。
「ま、待ちなさい。こんな町中で君達みたいな女の子と、何かをしてみろ、たちまち僕は、近隣住民から通報され、明日のニュースの見出しになっちまうぞ」
そうだ、その通りである。ミクちゃんが、何かする気として、こんな所でいかがわしい事は絶対出来ない。
「大丈夫ですよっ、救世主様っ。救世主様が世界をお救いする事を邪魔するものなんて、この世界には居ないのですっ!」
女神ちゃんがミクちゃんの背中を押す様な事を言った。
何なんだ、その理屈は、僕が世界を救うって、一体何なんだっ!
「救世主様、良いっスよね?唾液だけで良あっスから。それだけだで・・・」
ミクちゃんか何か、僕に許可を求めているが、ミクちゃん自身には僕の回答を待っている様子は無い。僕は、そのままミクちゃんに唾液を奪われた。
「ごほっ、ごほっ、ごほっ!」
急に唾液を奪われたので、僕はむせる。
「んー、とっても救世主様の魔力、美味しかったっス。有難うっス」
満足したのか、ミクちゃんはうっとりと恍惚な表情を浮かべている。
「終わったわね?じゃ、私も魔力使ったし、魔力補給させて貰うから」
ミクちゃんに変わって菜野葉ちゃんに両肩を捕まれ、そのまま唾液を奪われた。
「ごほっ、ごほごほっ、ごほっ」
またもや急に唾液を奪われたので、僕はまた、むせてしまった。
「ふふっ、美味しい・・・また頂戴ね、救世主様っ」
菜野葉ちゃんも、うっとりと、狡猾な表情を浮かべた。
「あ、あのっ!私も・・・」
次は梓ちゃんに肩を捕まれた。梓ちゃんも、二人と同じ様な事をしようとしてるのだろう。
「ま、待った!」
「ひゃ、ひゃう!」
僕は梓ちゃんに大声で制止したので、梓ちゃんは、小動物みたいな声を上げて驚いた。
「梓ちゃんは、魔法使って無いじゃないか・・・魔力補給する必要無いよね?」
唾液を奪われて、上手くコントロール出来ない口内を何とか発声し、はっきりと言葉を伝える。
「え、ええ・・・っ!そ・・・そうですけど・・・」
そうなのだ、先の人影みたいな奴を魔法で倒したのは菜野葉ちゃんとミクちゃんで梓ちゃんは僕を守っていて、魔法は使って無い。
「それなら、魔力補給は良いよな?する必要は無いよな?」
「え・・・あ・・・」
拒否されたと認知して、梓ちゃんの表情にはみるみる落胆の色が滲ませていく。
「頼むよ、三人も揃ってされると疲れるからさ」
そんな梓ちゃんの様子に不憫さを関して、ポンポン梓ちゃんの頭を撫でた。
「わあ・・・、は、はい、わ、わかりました・・・えへっ」
梓ちゃんは満足気に微笑んだ。
頭を撫でるだけで済みそうだ。良かったなあ。
そう思い、ふと視線を菜野葉ちゃんとミクちゃんに戻すと、二人はジト目で、僕が梓ちゃんを撫でている様子を見ていた。
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