21.「このままじゃ、生活費が枯渇する」
僕は4人の少女達に我が家の財政事情を告白した。
「無職になったばかりの僕に君達4人の食費を賄う金が無い」
良い齢こいた男の情けない告白に4人の少女はポカンと僕を見ている。
この子達の年齢じゃ、大人というものは、食費位、ぱっと出せる位の財力はあって当たり前位の認識かもしれない。
だが、しかし、僕という人間は、社会人として発達不良な人間。子供が思う、当たり前の大人の振る舞いなんて出来ないのだ。
「ふふっ、大丈夫よ!救世主様っ!」
初めに沈黙を破ったのは菜野葉ちゃんだった。僕の両手をがちりと掴んで言う。
「お金が無いなら、魔物を倒して、お金を得れば良いのよ!」
菜野葉ちゃんは自信たっぷりに、金欠に対しての解決策を述べた。
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「・・・魔物?」
「そうそう魔物よ!」
「昨日、菜野葉ちゃんと倒した奴?」
「そう、それ、魔物を倒せばお金が入るから」
意味不明な事を口にする菜野葉ちゃん。
そもそも、お金というのは、他者から支払われるものだ。魔物やら怪物を倒したとしても、自動的にお金が生まれて出てくる訳が無い。
「だったら、昨日倒した魔物の分のお金はどこにあるんだ?」
「多分、女神様が・・・」
菜野葉ちゃんが、視線を女神ちゃんに移す。
「え、えっと・・・」
女神ちゃんは視線を泳がせた。
「女神様、これ何っスか?」
ミクちゃんが女神ちゃんのポケットから何かを取り出した。
「あっ!私の財布・・・っ!返すですっ!」
菜野葉ちゃんが財布の中をまさぐると中から千円札が何枚か出てきた。
「これ、昨日の魔物倒した時に得たお金だよね」
「返すですっ!」
女神ちゃんは菜野葉ちゃんから財布をひったくったが、すでに菜野葉ちゃんは千円札を抜き去っていた。
「きゅ、救世主様、それは私のお金ですっ!・・・大体、魔物なんか倒しても、お金が出てくる訳無いじゃないですかっ!」
「えっ?魔物を倒したら、お金は出るでしょ、そんなの当たり前だよ?」
菜野葉ちゃんはきょとんとした顔で僕を見つめる。
「当たり前って言われても・・・なあ、ミクちゃん、梓ちゃん」
二人に聞いてみた。
「えっ?魔物倒したらお金が出るっスよ、知らなかったんスか?」
「ま、魔物の体からお金が沸くんですよ・・・」
二人は信じられない様な目で僕を見ている。
「そんな訳無いじゃないか!?そんな訳があったら、僕はわざわざ毎日会社で怒鳴られに行かずに、毎日魔物ボコしてお金を得て生活してるよ」
そんな事でお金を得られるなら、世の中楽に生きられるのである。
「そう?じゃあ、救世主様?今からあたし達と魔物倒して、お金稼ぎしに行こうっス!」
ぎゅっと僕の手を握るミクちゃん。
「う、うんうん。そこ、救世主様、お金が無いなら、私達が、戦って稼ぎますよ」
にっこり微笑む梓ちゃん。
「そうしましょうよ、救世主様、私達が救世主様をうんとお金持ちにしたげるわ!」
菜野葉ちゃんがガッツポーズした。やる気にみなぎっている様だ。
さて、どうしようか。何か3人がとんちんかんな事を言っているが、付き合ってやるか・・・?
「・・・とりあえず、ご飯食べてから考えようか」
どうせ失業していて暇なのだ、彼女達の提案を聞いてみる事にした。
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