Fクラス勉強会
放課後になり勉強会をする時間になった。
オレ、白銀、星、七瀬の四人は勉強をするため図書室にやってきた。
この学校の図書室は一般的な学校の図書室に比べてかなり大きい。
本の数はそんなに変わらないのだが、机と椅子が置いてあるスペースがかなりある。
おそらく自主勉強をするためのスペースとして用意されているんだろう。
勉学を怠ったら退学というこの学校の性質を考えたら、自主勉強するスペースが多めに用意されているのは、当たり前と言えば当たり前だが。
「まずは先月に行った小テストの解答を見せてもらえるかしら。少し前に返却されてたでしょ」
先生役が七瀬と白銀で、生徒がオレと星。
星に教えるのは七瀬で、オレに教えるのは白銀が担当するみたいだ。
オレと星が4月に行われた小テストの解答用紙を二人に渡す。
「これで二人の苦手な箇所を把握して、そこを重点的に教えていくわ」
七瀬が主導で勉強会を進めていく。
苦手を潰し解ける問題を増やしていく。
「それと、今月の小テストの出題範囲も勉強するわよ」
「ひえぇ。こんなにテスト範囲広いのかよぉ」
「泣き言言わない。早速始めるわよ」
それから本格的に勉強が始まった。
問題集を解いて、間違えたところを七瀬と白銀に教えてもらい理解を深めていく。
オレと星が問題集を解いている間は、七瀬と白銀は自分の勉強をしていく。
オレと星の勉強を助けて、自分の勉強が疎かになり退学した、なんてことになったら笑えない。
オレが問題を間違えれば間違えるほど白銀の貴重な勉強する時間を奪ってしまうことになる。
オレに間違えた箇所を教えている間は白銀は自分の勉強ができないからだ。
それは少し気が引けるため、面倒だが少しだけ頑張ることにした。
勉強会を始めて二時間ほど過ぎ、時刻は午後5時ごろ。
「そろそろ終わりにしましょうか」
七瀬がそう言い、緊張感が緩み疲れがどっと押し寄せる。
「はあぁ、マジしんどっ」
星が机に倒れこみ、寝そべる形になる。
「これからは放課後の勉強会を頻繁に行うから、特に星くんは必ず来て。いいわね?」
「まじかよ。今月の小テストの日まででいいんじゃねえの?」
「馬鹿言わないで。今月の小テストが終わってもまた来月、再来月に小テストがあるのよ。退学したくなかったら参加することね」
この勉強会はこの学校を卒業するまで行う必要があるだろうな。
学力を高めなければこの学園では生き残れない。
「さて。オレもそろそろ帰るか」
ノートや教科書、問題集なんかを片付け帰ろうとする。
しかし、さっきまで解いていた問題集が机のどこにもない。
辺りを探すと白銀がオレの問題集を持っていた。
「片付けるから返してくれ。白銀」
そう言ったはずだったが、白銀はこちらを見向きもせず、問題集を開き真剣な面持ちで凝視している。
「白銀」
もう一度名前を呼ぶと今度は聞こえたようで、こちらに視線を向ける白銀。
「そろそろ帰るから返してくれ」
「これ…………………どういうこと?」
白銀が目を丸くしてこちらに訊ねてくる。
「私、自分の勉強に集中してたから気付かなかったけど、九条くん………………一問も間違えてないよ?全問正解」
「そうか。それはよかった。頑張ったからな」
「普通、頑張ったってこんなすぐにはできないよ?先月の小テストで間違えてたところも正解してるし、そのほかも…………」
白銀の言う通り、今回の勉強会で解いた問題は全て正答している。
オレが間違えて白銀の勉強する時間を奪うのは避けたかったからな。
「九条くん。ここまで勉強ができるのに、何でこんなに点数が低いの?おかしいよね?」
「人知れず努力するタイプなんだ、オレ」
「とてもそんな風には見えないよ?」
いくら誤魔化しても疑念は消えそうにない。
ここは白銀を安心させるため素直に言っておくか。
「まぁ、勉強はそれなりにできるからな。だから、退学なんてことにはならない。そこは安心してくれ」
勉強ができることをアピールすると、白銀は少し安堵した様子だった。
「…………そっか。そうなんだね」
「そろそろ帰ろう。明日も学校だ」
オレたち四人が片付けをして帰ろうとしたとき、図書室に大人数の足音が聞こえてくる。
「ハッ。こんなにバカみてぇに机にかじりついてるヤツがいるとは思わなかったぜ。見に来て正解だったなぁ」
静かな図書室に響き渡る声。
それを発したのは10人ほどの生徒の集団の先頭にいた男子生徒だった。
明らかに目つきが悪くガラが悪い。
しかし、その風貌には見覚えがあった。
「バカがバカみてぇに勉強してらぁ。ククッ、面白ぇなぁ」
「二階堂くん………………」
白銀がぼそっと呟く。
入学初日にオレと白銀といざこざを起こした二階堂だった。
二階堂が引き連れている集団の中には剛力と高橋の姿もある。
まさか同じ学校だったとは。
「ちょっとあなた。ここは図書室よ。静かにできないなら帰りなさい」
七瀬が強気にでる。
「何だお前。気安く俺に話しかけてくんじゃねぇ。殺すぞ」
ただでさえ悪い目つきをさらに悪くして七瀬を睨む二階堂。
「何の価値も意味もない学力向上に勤しんでるとはな。さすがはFクラス。ククッ、無能だな」
「あなたこそ、品性と知性の無さが顔に出てるわよ。人のことをとやかく言う前に自分の心配をしたら?」
威圧感のある二階堂にも強気にでていく七瀬。
「今日はFクラスの雑魚どもの顔を見に来ただけだ。近いうちに遊んでやるよ」
こちらの発言は全て無視し、二階堂は大所帯を引き連れ図書室から去っていく。
嵐のように現れ、嵐のように去っていった。
「九条くん。二階堂くんは何がしたかったんだろうね」
「さぁな」
二階堂の行動の意味は分からないし、興味もない。
二階堂と同じ学校、しかも同じ学年みたいだ。
収穫はそれだけだった勉強会初日だった。
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