第26話 再会
乙葉は軽く神社の周りをまわり、異常がないかを探し始めた。霊力開放で少しばかり、霊脈が乱れてはいるが、すぐに治りそうだった。
(よかった・・・・・・・)
確認を終えて、しばらくボーっと境内を眺めていると、後ろのほうで、石段を上がってくる音が聞こえた。
(・・・帰るか)
上ってきた女性に会釈し、乙葉は石段に足をかけた。
「ちょっと待ちなさい」
「え?」
女性が唐突に、乙葉の腕をつかんだ。長い髪が流れ、甘い香りがほんのりと漂った。
「・・・・忘れたの?」
「あ、大神様の・・・。すみません、」
「まったくもう。気づきなさいよね」
そこには、ワンピースを着た大神様の式神がいた。服一つで、雰囲気が違って見えた。
「・・・・今日は服着てるんですね」
乙葉はふざけて、軽口をたたいた。
「あら。着ないほうが好み?」
「・・・・なんの用ですか」
やり返されて、赤くなりそうになる顔を引き締め、乙葉は聞いた。そんな様子もお見通しなのか、彼女は顔をほころばせた。
「特に用ってわけじゃないんだけど、ここの霊脈が乱れてたから」
「あ~。すいません。俺のせいですね」
「やっぱり? 霊力からしてあなたじゃないかと思ってたの。・・・・見に来てくれてたんだ」
「まあ、自分の命にかかわる処置をしたわけですから。それぐらいはしますよ」
「ふ~ん、ありがと。じゃ、私も見てくるね。またね!」
「え、ええ」
終始、マイペースに話しきった彼女が乙葉の横をすり抜け、境内に向かった。乙葉は少し、たじろきながらも、帰路についた。
(・・・・・面白い人、いや、式神だなあ)
式神は基本的に、自分が契約している陰陽師としか接触をしようとしない。力がばれる可能性もあるからだ。
しかし、彼女は、祖父のことがあるとはいえ、随分気さくに話してくれる。
(鴉がいたら、強者の余裕だとでも言いそうだな)
少し神楽祭に興味を持ち、乙葉は歩みを速めた。
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「・・・・まだ、寝てるのか」
乙葉が宿に着くと、美咲はまだ寝ていた。幸せそうな顔で、小さくいびきもかいている。
(まあ、俺のせいかもしれないけどな。・・・・心配、させっちゃったし)
「お~い、朝だぞ。美咲、起きろ~」
少し不憫だが、乙葉は起こしにかかった。彼女の用意がどれだけかかるかはわからないが、乙葉と違って、身支度が15分たらずで終わるとは思えない。
「ん~~、あと、5分・・・」
「そんなこと言ってないで、起きてくれよ~」
※次回更新 5月6日 水曜日 0:00
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