12.カラカラと落雁の活字は鳴る

 ある日、縁遠くなったと思っていた友人から手紙が届いた。

 封筒の中には、カラカラとした、小さな活字金型のような落雁とカードが入っていただけ。

 友人が魔法菓子職人になったと聞いたのは、何年前だろうか。


「君に食べてもらいたくなったので、贈ります」


 落ちぶれた小説家に活字とは、嫌味なのか。しかし、友人の天然ボケした顔を思い出し、気が付くと口にしていた。

 ほろりと溶ける落雁の味は優しく、清涼感があるのに、甘さがしみ込むようだ。

 なぜこんな上品なものをと考えていると、


『君の中にある物語が大好きだよ』


 と、活字が脳裏に浮かんだではないか。


 ――こぼれた涙が真白なノートに落ちる。握る気が起きなかった万年筆へ、手を伸ばした。


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2020/12/26~2021/1/11開催

全通販型同人誌即売会 Text-Revolutions Extra2(テキレボEX2)公式アンソロジー寄稿作品

お題「手紙」

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