怪我人
「で、ガゼル。昨日の国王様に呼ばれた件はなんだったの?」
教室で外の景色を眺めているとオリビアが訊ねてくる。よほど気になっていたようで、食い入るように眺めている。
「あぁ、あれな。オレが国王様の影武者をしたときのことのお礼を言われたんだ」
「あの時は大活躍でしたもんね」
オリビアとの会話にクシェルも混ざってくる。
「まぁな」
「『まぁな』ってガゼル、アンタ自分がどんだけすごいことしたか分かってんの?国王様の暗殺を未然に防いだのよ!」
そんなことを言われても、オレにとっては大したことないことなので返事に困ってしまう。
「あの時はオレも巻き込まれたし、事件の全体も知りたかったから調べていただけで、国王様を守ったのはついでみたいなものだし」
そのセリフにオリビアとクシェルは呆れ顔になる。
「呆れた……。国王様ほどの命をついでで守るって、アンタどんだけ大物なのよ……」
そうしていると、チャイムが鳴り授業が始まる。二人とも席に座って授業を聞いていたが呆れた顔は元に戻ってはいなかった。
学校も終わり、オレは家に帰っていた。
相変わらず大通りは人が多く賑わっている。
歩いていると、路地の方に人だかりでできていた。
オレは気になって、路地の方に歩いていく。
「すいません。何かあったんですか?」
集まっている人の一人に訊ねてみる。
「なんか路地裏で人が倒れてるみたいなんだ。大きい怪我をしてるみたいで、応急処置をしているんだ」
怪我ならオレの魔法で治せるかもしれないな。
オレは人混みをかき分け騒いでいる中心へと向かう。
すると、見知った顔の人が血を流し倒れていた。
「リルルさん!?」
その人は昨日会ったばかりのリルル・マレイラだった。軍服を着ているので仕事中だろうか?
「………ガゼル……くん………?」
リルルは消えそうな声でオレの名前を呼ぶ。オレは急いで彼女の元へ寄り、治癒魔法をかける。
「今治します」
「………ごめんね。面倒が嫌いなのに手間……かけちゃって………」
安心したのか、リルルはそのまま意識を失い倒れてしまった。
オレは彼女を抱き抱え、軍の本部へ急いだ。
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