民主派
とある一室、レイラはベッドで寝かされていた。
ベッドのそばには出場選手たちが心配そうにして、佇んでいる。
その中には、生徒会長キース・グランハルトの姿もあった。
「治癒魔法をかけて置いたから、命に別状はないと思いますが、二日は安静にしていてください」
医師からそう告げられレイラは悔しそうに口を紡いだ。
ガゼルの治癒魔法は特別早く治るが普通の人間が使う治癒魔法はかけても安静が必要なのだ。
「どういうことだよっ!大会委員の奴ら!俺たちの時だけ反撃するようにするなんてっ!」
出場選手の一人が怒りを露わに吐き捨てる。
そう思うのも仕方ないだろう。
今も競技は何事も無かったかのように進められ、ディアフォード学園の時だけ失格という形になっている。
あの後、大会委員がゴーレム達を調べてみたが異常はなく、操作魔法で問題なく操れているから、競技続行と判断されたようだ。
「落ち着け、確かに大会委員の対応は冷たいが、奴らはゴーレムが反撃し出したのは意図的ではないと主張している。それに国王様の前で中止にすることができなかったんだろう」
キースは怒りを露わに拳を握っているメンバーに落ち着くように声をかける。
しかし、キースも内心怒っていた。
身内を怪我させられて黙っていられるわけがなかった。
大会委員は原因究明より競技続行を選んでいる。
キースはどうしても原因を知りたい気持ちだった。
「仕方ない、あいつに相談してみるか」
キースは扉を開けて、ある人物のところへ向かった。
「首尾はどうだ」
男が尋ねる。
「順調です。ゴーレムの暴走も我々の手によるものとは気づいていません」
黒髪の女が答える。
「ならばいい。今回の大会。ディアフォード魔法学園には負けてもらおう。ーーー不慮の事故でな」
「よくオレが来ていることが分かりましたね」
オレはキースに呼び出されていた。
「それよりも、今回の事件お前はどう思った?」
「事件・・・ですか?事故ではなくて?」
「ああ、今回の件、大会委員は意図的にやったのではないと主張している。もしそれが本当なら、第三者からの介入で起こった事件である可能性が高い」
なるほど、生徒会長はそう考えているのか。
確かに今回の事故はなにかと不審な点がある。
その考えはおそらく間違っていないだろうが、決定打に欠ける。
「それに、軍から情報が渡ってきた。お前の家を襲撃した奴らは、民主派的な考えを持っていたようだ」
「民主派ってなんですか?」
知らない単語がでてきて思わず聞き返した。
「民主派とは、国王は皇族ではなく、民によって選ばれた人が国王になるべきだ、という考えを持つ、反社会的な思想の持ち主のことだ」
テロリスト予備軍、といったところか。
その連中の襲撃と今回の事故、これらがつながっているのだとしたら・・・
オレは今回の事件の全体像が見えた気がした。
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