予感

 しばらくしてセレスが泣き止んで落ち着いてきた所でオレは今回の事件のことを聞いた。


「セレス、お前たちは何者なんだ?なんでこんな事をしたんだ?」


 はっきりそう聞くと少し後ろめたそうに話し始めた。


「僕たちはただの殺し屋だよ。依頼をお金で請け負ってターゲットを殺す本当にただの殺し屋。数日前に君を殺して欲しいという依頼を受けたんだ」


「その依頼主のことは何か知っているのか?」


「分からない。僕は依頼が来たという話を聞いただけで依頼主と直接話したわけじゃないんだ」


 その依頼主、何者だ?

 セレスの言う通り、学園で優秀なやつを狙っただけだと思うが妙に引っかかる。

 今の段階ではなんとも言えない。


「とりあえずその依頼主が何者なのか知りたい。あの長髪の男なら何か知っているかもしれない。あいつが今どこにいるか分かるか?」


「多分アジトに戻っていると思う」


 チャンスだな。

 あいつはオレもセレスも死んだと思っている。

 今なら転移魔法テレポートで隙を突いて締め上げることができそうだ。


「行こうセレス」


 セレスは立ち上がった。

 うん、と頷きセレスは転移魔法テレポートを使った。





 オレとセレスは山奥の小屋の前に立っていた。

 どうやらここがアジトのようだ。

 人がいるにしては気配がないな。

 オレはそーっとその小屋の扉を開ける。


「なっ!?」


 中の様子を見て驚愕した。

 長髪の男が部屋の床に倒れている。

 オレはゆっくり近づき男の様子を伺う。

 ・・・死んでいる。


「どういうことだろう、一体誰が・・・」


 セレスがそう呟いた。

 オレも同じ疑問を抱いていた。

 こいつから依頼主のことを聞き出そうとしていたのに、これではそれができない。

 先に口を封じられてしまったということか。

 ということは、こいつを殺ったのは・・・


「ふせろっ!!」


 オレは外に人の気配を感じ取り、急いで魔法障壁を展開する。

 直後、オレたちのいた小屋が崩れて瓦礫が覆いかぶさってきた。

 障壁によって防がれる瓦礫の山。

 魔法障壁を展開していなかったら潰されていただろう。

 オレたちは瓦礫の山の中から姿を現した。


「危なかったなセレス。大丈夫か?」


「助かったよガゼル。これは一体?」


 セレスは何が何だか分からずオレに聞いてくる。


「あいつだ」


 オレは視線でそう促した。

 見ると、若い黒髪の女が森の中に立っている。


「流石にこの程度では死にませんか」


 女は不気味な笑みを浮かべている。


「何者だ?」


 女の表情からすーっと笑みが消えていく。


「今回はこれで身を引いておきます。それでは、いずれまたどこかでお会いしましょう」


 女の姿は暗い森の闇の中に消えていった。


「なんだったんだろうあの人・・・」


「さぁな」


 セレスの問いかけを素っ気なく返しながら、オレはこれから起こるであろう波乱の日々を予感していた。



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