第7話幽閉2日目3と後日談

 王城内は阿鼻叫喚の修羅の場となった。

 王族も貴族も士族も、親兄弟が殺し合い、己の欲望を剥き出しにしていた。

 なかにはこの気に乗じて女官を犯す者、王家の財宝を盗む者までいた。

 だがそのような者は小者でしかなかった。

 国王の座、王国の実権を手に入れようと、情け容赦のない殺し合いだった。


 王太子は側近のいない王女を捕縛し、側近に犯させた。

 父王の目の前でだ!

 散々下劣な現場を見せつけた後で、父娘並べて斬り殺した。

 実の父、国王を弑逆しての王位簒奪だった。

 愚かにもほどがあった。

 これで守護神の加護など得られるはずがないのだ。


 塔に閉じ込められていた聖女は、騒乱音で状況を察した。

 もはや手遅れだと、断腸の思いで諦めるしかなかった。

 聖女には根拠のない自信があった。

 その自信だけを胸に、無慈悲な決断をした。

 いや、無駄な努力に見切りをつけた。


 一旦切れた守護神との契約通りに祈っても、もう守護など得られない。

 人間の身勝手で、一方的に契約破っておいて、また護ってくれと言っても、聞き届けてくれるような神族でない事は、過去の記録を調べれば直ぐに分かる事だ。

 聖女に選ばれた時に、色々調べ記憶しているダイアナには、明白な事だった。


 だが、一度は聖女と認められた身だ。

 ラステ王家とは関係のない、ダイアナ個人として神と絆を結ぶ事はできると思っていた、いや、思うしかこの先の希望はなかった。

 彼女は乱世の王城王都を抜けだし、まだ神と契約をしていない、はるか西方の荒地を目指した。


 国王と王族を皆殺しにして王位についたチャールズと、チャールズを誑かしたカミラに、明るい未来などなかった。

 近隣諸国が一斉に攻め込んできたのだ。

 ラステ王国の民を神との契約で生贄に捧げる国。

 純粋に財宝だけを目当てに攻め込む国。

 民を奴隷として攫おうとする国。


 その噂を聞き、絶望した王都の民は王城に攻め込んだ。

 内乱で激減した貴族士族では護り切れなかった。

 いや、新王と新王妃を捨てて我先に逃げ出した。

 新王チャールズと新王妃カミラには、思いつく限りの拷問をくわえられた。

 二人並べて繰り返し犯された。

 最後は肛門から口に杭を打ち込まれて絶命した。


 ラステ王国の滅亡から十数年後。

 遥か西方の荒地に小さな国が建国された。

 国民の数が千人を切るような、本当に小さな小さな国だった。

 二人の幼子の手を引く従士装備の夫と、生まれたばかりの嬰児を抱いた妻。

 夫婦仲良く毎年神に祈る事を契約内容として、新たな王国が建国された。

 この世界では初めての夫婦での神契約だった。

 


 


 

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