第4話

「ふん!

 死に土産に教えてやろう。

 地獄で己の悪行を反省するがいい。

 レイドス伯爵家のウルスラ嬢を見習い、今度生まれ変わるときは、彼女のようの高貴な性格に生まれ変わるのだな」


 笑ってしまいますね。

 レイドス伯爵家のウルスラ嬢が高貴な性格とは、愚かにもほどがあります。

 ですがこれで敵がはっきりしました。

 ウルスラ嬢は殺すべきですね。


「死ね!」


「なにをなされますか!

 それでも王太子ですか?!」

 

 凄いですね。

 いつの間にか兄上が間に入ってくれています。

 気配は察知していましたが、私達を護るために、これほど素早く間に入ってくれるとは思いませんでした。

 ディラン公爵家令息ディエド卿。


 このゲーム上では私の兄にあたられる方です。

 私アルテシアが悪役令嬢のままならば、王太子にも兄にも殺される設定です。

 王太子に殺される流れはそのままですが、王太子とヒロインとの仲は最悪ですね。

 王太子は悪役に配役が変わったのでしょうか?

 兄ディエドが一番の攻略対象に変わったのでしょうか?


「ディエド!

 不敬罪、いや、謀叛人を庇うのか!?

 ディラン公爵家全体で謀叛に加担しているのだな!」


「先ほどから聞いておりましたが、これは殿下が間違っておられます」


「なんだと!

 お前まで余を愚弄するか?!

 許さん。

 絶対に許さん!

 国軍を動員して、ディラン公爵家を討伐してくれる」


「分かりました。

 そこまで申されるのでしたら、ディラン公爵家の誇りをかけて、無実を証明させていただきます。

 その代わり無実が証明出来たら、殿下のお命をいただきます。

 殿下にその勇気とお覚悟があるのですね」


「ふん!

 どうやって無実を証明する。

 よほどの証拠がなければ、だれもお前達の言うことなど信じないぞ」


「神明裁判を行います。

 この一命を捧げ、神に真実を証明していただきます。

 神の審判を否定する者も疑う者もいますまい。

 ディラン公爵家の嫡男である私と妹のアルテシア、教会が認定した聖女エルティナを貶め、無実の罪を、事もあろうに謀叛をでっちあげて殺そうとしたのです。

 殿下のお命をいただかねば、ディラン公爵家も教会も面目が立ちません。

 そのお覚悟があるのですね」


「当たり前だ。

 私はこの国の王太子だ。

 私の見る眼に間違いはない。

 お前達三人は間違いなく謀叛人だ。

 神明裁判でもなんでも受けて立ってやろう!」


 馬鹿です。

 どうしようもない馬鹿です。

 ここまで来ても、自分がウルスラに騙され踊らされている事に気がつきません。

 これは廃嫡一直線でしょうか?

 ここまでシナリオを変更されると全く先が読めませんね。

 やり込んだゲームにボーナス設定が隠されていたようで、とてもワクワクします。

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