第11話

「違う!

 断じて違う!

 だが確かに疑われても仕方がないな。

 今思い直すとローズ嬢の言う通りだ。

 今のままではローズ嬢が恨まれるばかりだな。

 だがだからと言って、ローズ嬢とガブリエルの好き勝手にはさせん。

 二人の結婚だけは絶対に認められん。

 弟子入りというのも止めてもらいたい!」


 ダメ、なのでしょうか?

 ガブリエル様と私は結婚できないのでしょうか?

 最初は全然思ってもいなかった事です。

 ですが、わずかでも可能性が見えてしまうと、執着してしまいます。

 どんな悪逆非道な手段を使ってでも、誰を不幸にしてでも、ガブリエル様と結婚したいと思ってしまうのです。


「それはダメです。

 貴族同士の約束です。

 それを破ることは名誉にかかわる大問題です」


「王が頭を下げて頼んでもか?」


「そもそもその原因は国王陛下の私情により失政が原因です。

 ローズ嬢と私の約束も、その私情の被害から仕方なく交わされたモノです。

 それを脅してやめさせようというのですか?

 さらにローズ嬢と私の国王陛下に対する忠誠と信頼は失われましたね」


 ガブリエル様が国王陛下に対して、情け容赦のない言葉を叩きつけています。

 これでは本当にこの場で殺し合いになってしまうかもしれません。

 ガブリエル様が国王に負けるとは思いせんが、ここは王宮です。

 王が指定した謁見場です。

 王に有利になる仕掛けが数多く施されているはずです。

 いざという時のために、ガブリエル様から先ほど教えていただいた、呪いの術式を準備しておきましょう。


「止めなさい、ローズ嬢。

 むやみに呪いの術式を準備するモノではありません。

 それにここは、暗殺防止のために魔術などを跳ね返す仕掛けが施されています。

 危険だからやめなさい。

 それにそんなに心配しなくても、私がもう準備してあります。

 王家の防御魔法であろうと、術式反射の仕掛けであろうと、討ち破って殺してしまう用意をしてあります」


 なんて用意周到な方なのでしょうか。

 ここに呼び出されて急いで用意されたのでしょうか?

 それとも、王城や王宮に来る時には必ず用意されているのでしょうか?

 だとしたら、最初から国王陛下も王族も信用されていなかったのですね。


 国王の顔色が真っ青です。

 なるほど、そういうわけですか。

 最初からガブリエル様と私を怒らせるつもりだったのですね。

 私たちを怒らせて、魔法を発動させて、王家の仕掛けで殺すつもりだったのです!

 でもそれを見破られていた上に、その上を行く魔法を準備されていたのです。

 このままでは殺されると思っているのでしょう。

 ですがガブリエル様の言う事は本当なのでしょうか?

 ガブリエル様が嘘をつくとは思いませんが、嘘ではなく謀略とい事はあります。

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