第10話

 よくこれだけの兵力を我が国に送り込めたものです!

 なんと千に近い敵が私を拉致しようと襲い掛かってきます!

 

「助けに参りましたぞ、乙女!

 どうぞこちらに来られてください!」


「黙りなさい!

 裏切り者の小汚い謀略に引っかかる私ではありませんよ!

 この不忠者を成敗しなさい!」


 前世で私を売った貴族が、今生でも私を裏切りました。

 こいつらが密かにモンザ王国と通じているのは分かっていたのです。

 今回千に近い敵を、王城どころか最奥部の王宮部に引き込めたのも、こいつらが手引きしたからです。

 いい機会です!

 皆殺しにして城地を接収してやります!


「これは不忠者をあぶりだし滅ぼす好機です。

 滅ぼした城地の半分は敵の首をとった者に与えます。

 奮起して戦いなさい!」


「「「「「おう!」」」」」


 私を護る親衛隊と近衛隊が勇躍しました。

 特に今生で召し抱えた給料制の腕自慢は、ここで活躍すれば領地持ちの騎士に成りあがれる可能性があるのです。

 俗にいう一国一城の主になれるのです。

 冒険者や傭兵からの叩き上げは、眼の色を変えて敵の首を狙っています。


「ヒィィィィ!

 許してくれ、許してくれ、許してくれ!」


「出来心なんだ、許してくれ!

 やめろ、やめてくれ!

 俺は由緒正しい家柄の貴族だぞ!

 お前らが近寄っていい存在ではないのだぞ!」


 裏切者達が必死で抗弁したり詫びたりしていますが、私が許すはずがないではありませんか。

 この期に及んで見苦しいです。

 視界に入るだけで汚らわしいです。

 さっさと滅んでもらいます。


「うぐっ!」


「ベアンカ!」


 私を殺すのですか?!

 秘宝を手に入れたかったのではないのですか?

 アメリア皇国に渡すくらいなら殺した方がいいと判断したのでしょうか?

 それとも死なない程度の攻撃なのでしょうか?


「闇隠し!」

「連火弾!」

「連岩弾!」


「「「「「ウギャァァアァァァア!」」」」」

 

 私に殺到していた敵の大半が無残な死を迎えました。

 私を闇魔法で敵から隠してくれたのは、風盗賊団のアベルですね。

 火の弾丸で敵を斃したのは、同じく風盗賊団のケインでしすね。

 足元の大理石を岩の弾丸に変えて敵を斃してくれたのは、同じく風盗賊団のレイラでしょう。


 風盗賊団が王宮内に入りこんでいるのは察していました。

 混乱が起これば私を拉致しようとすると思っていました。

 それが助けてくれるとは意外です。

 それともこれから拉致するのでしょうか?


「何故助けてくれるのです?

 それともこれから誘拐するのですか?」


「詫びだよ。

 ルークのせいで他の国から狙われるようになっちまったからな。

 こいつが今回の頭だ。

 元凶の王太子はルークが首を取りに行っている。

 その首で今回迷惑をかけたことは帳消しにしてくれ」


 本心なのでしょうか?

 ちょっと信じられませんが、アルドスを殺してくれるなら助かります。

 この手で殺して、前世の恨みを晴らしたい気持ちもありますが、民を巻き込みたくはないですし、風盗賊団が殺してくれるのならそれもいいでしょう。

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