第7話

「乙女、いかが取り計らいましょうか?」


「本気、なのですね?」


「はい、斥候が集めた各種の情報を検討した結果、間違いないと判断いたしました。

 断れば軍勢が攻め込んできます」


 カロジェロ宰相の判断は私と同じです。

 カロジェロ達重心に届いているのと同じ情報が私にも報告されています。

 それにしても、何を焦っているのか分かりませんが、駐在大使の派遣を断れば、モンザ王国は攻め込んでくるでしょう。

 

 攻め込まれたとしても、そう簡単に滅ぶファルン王国ではありません。

 十六年間でそれだけの準備は整えました。

 ですが、モンザ王国と全力で、しかも国内でたたかえば、モンザ王国を撃退しても、国力と戦力は激減してしまい、他国の介入もしくは侵略をゆるしてしまいます。


 理想は時間を稼いでさらに国力戦力を充実させ、モンザ王国を圧倒する戦力を整え、モンザ王国に攻め込み滅ぼすことです。

 自国領内で農地を荒らすような戦争は論外です。

 ですがそれには後二十年、いえ、十年は必要です。


 やっと魔境騎士団が軌道に乗り出したのです。

 魔境に狩りに入る権利と騎士の位を与える代わりに、魔境からの恵みで騎士に必要な装備を整え、敵国が攻め込んできた時には剣を取り戦う魔境騎士。

 彼らが五千騎、いえ、二千騎そろえば国を保つ事だけはできます。

 何度攻め込まれても撃退が可能です。

 

「献策はありますか?」


「申し訳ありません。

 才無き身を恥じるばかりでございます。

 乙女には腹立たしいことかとはおもいますが、モンザ王国の要求を飲まれるしかないと考えます」


 やれやれ、情けない話ですね。

 この国に人材がないのは生まれた時から分かっていましたが、十六年間で少しは改善できたかと思っていたのですが、低い身分から引き上げた私の側近以外は役立たずばかりです。

 

 いえ、役立たずならまだいいのですが、中にはモンザ王国と通じている者さえいるのですから、ため息しかでませんね。

 まあ、それでも、大臣級だけは前世で裏切らなかった者を厳選しました。

 今生でも裏切っている形跡はありません。

 無能ではありますが、忠誠を尽くしてくれています。

 でもこれからは分かりません。

 もっと裏切り工作を仕掛けてくるでしょうからね。


「ではしかたありませんね、対抗策を指示します。

 モンザ王国の使者には、モンザ王国だけ駐在大使を認めると、他国との騒乱の元になりますから、他国にも駐在大使を置くか確認するので、しばし待つように伝えなさい。

 特にアメリア皇国を差し置いて、先にモンザ王国の大使を置くのは、戦争を招きかねない大問題です。

 それと、そうですね、私がアメリア皇国に皇族の婿を願い出ていることも伝えなさい」

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