第4話 4日目 朝の流れ〜だらだらと
# 令和2年2月4日の記録
日々編
さて、4日目だ。昨夜はヒルナミンを先生がカットしてくれて、かわりにブロチゾラムという睡眠導入剤を飲んだ。
もともとヒルナミンは睡眠導入剤じゃないんだ。薬ってものは大きく分けて3つ。抗不安薬、抗うつ剤、そして抗精神病薬で、 抗精神病薬ってのが、ものすごくきついんだ。幻覚・妄想を落ち着ける、っていうか、もう、薬の力で抑えつけるみたいなところがあるから。飲む拘束具なんて呼ばれる薬もあるくらい。
ヒルナミンはその抗精神病薬で、副作用であまりにも眠くなるから、それを睡眠導入剤として使ってるってわけ。なにこの口調。でも、幻覚・妄想が激しい人たちはこれを日中に飲んで生活しなきゃいけないと思うから、本当、大変だと思う・・・。
実は家から30錠くらいブロチゾラムをこっそり持ち込んできてた。だから、処方されただけでは眠れなくて、合わせて4錠くらい飲んだ。それでも1時半くらいに中途覚醒した。まっくらな病棟の中、スタッフステーションにとんぷくくださいーテヘペロと言うと、ブロチゾラムかヒルナミンを選んでいいって言われた。ヒルナミン2錠までは許可が出てると言われたけど、朝から昼くらいに大きな影響が出そうだから、ブロチゾラムだけまたいただいた。
それで、いつもみたいにiPadのYouTubeで、NHKの映像の世紀を流しながら眠った。これ、わりと眠れるパターン。それでねむれなければ、麻雀を半荘3回くらいやると絶対眠れる。
さて、朝になって、6時半。ナースが起こしに来てくれる。起床は6時半。それで記録表を持って、ナースステーションに行く。血圧計があるので、血圧を測る。上が128の下が94くらい。体温は36.1度。高い!2日目は34.2度だったから、普通の人の38度くらいかも。出た、低体温自慢。これを記録表に付けていく。
食事は7時半。部屋の外の談話室的スペース。ラウンジって呼んでるけど。ここの扉が施錠されていて、食事の時間になるとナースが解錠するって寸法。
でも寝てたら、ナースが起こしに来てくれて、7時45分くらいだった。8時にはもう食堂が閉まってしまうので、いそいだ。
……ここの食事は。毎日、すごく豪勢なものが出るわけじゃない。でも。ひとつひとつ、パンのあったかさとか、スイーツの器とか、そんな小さなところに、優しさを感じる。誰もが言う。ここの食事は最高だって。そんなすごいものが毎日でるわけじゃないんだよ?切り干し大根とか、そういうのばっかり出たりもするし。
でも、2月2日は、酢飯と海苔だった。食べた後になって、気がついた。あああ、これ、恵方巻やれってことだったんだ?って。そういう楽しさがこの病院にはある。
ご飯を食べたら、スタッフステーションで食後の薬。トーカは双極性障害だから、薬一錠一錠がすごくでかい。それが4錠くらいですか。リーマスというんだけど。この薬は炭酸リチウムというのだけど、テンションが高い人に飲ませるとなんか落ち着くらしいということで、ずっと昔から飲まれている薬で、どういう医学的作用でそうなるのかわからないらしいです。そういう効果があるらしいから飲まれてるという薬。
薬をきちんと飲んでいるか目視されながら飲むんだけど、吐き気があとで来るから、ごめんなさい、一錠ごまかした。
9時になると、スタッフステーションの前に行列ができる。何かというと、シャワーと入浴が先着順だから、早い者勝ちで取らなければいけないのだ。風呂は2日ないし3日に一度だけどシャワーは取りさえすれば普通に毎日使える。
今日はすっかり忘れていたので、どちらも取れなかった。
そう、久しぶりにここに入院して、すごく変わったことがあった。以前はプリペイドカード式のテレビがあったのだが、なくなった。かわりに、ホスパッドという、iPadをベースにしたタブレットが配布され、それにテレビチューナが内蔵されており、テレビが見られる。これ、本当にiPadベース、Appleベースのもので、iPhoneやiPadのように、左上にiPadと表示されているからアップルが医療関係者向けに作ったタブレットなのだろう。すげえ。でも、テレビを見ることとブラウザくらいの機能しかなく、アプリはなにも入れることができない。実際のiPadを入院直後に買って正解だった。
明日は外出の話、カフェの話、禁止されてることの話とか。
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身体の異常編
前回途中だった身体の異常についての続きを。
多忙だけど、金を稼げるから、まあ、一言で言えばがむしゃらに頑張ってたつもりだった。そうこうしているうちに、部屋に帰ってひたすらに酒を飲むようになった。スパークリングワインを1本。9%の缶チューハイを1本か2本。ゲームをやって、動画を見ているうちに3時。3時になって、やばいなあと思い始めるけど、止まらない。4時になり、4時半になり、やっと眠る体制に入り始める。無理やり睡眠導入剤で落とす。2時間ほど寝て、無理やり爆音めざましで起きる。
その生活を続けていた。耳のカビはひどくなる一方だった。通院している心療内科の先生から、ついに入院勧告が出された。「トーカさん、相当疲れてるよ。入院したほうがいい。免疫力が極端に落ちている。だからインフルエンザにもかかる」という話が出始めて、次の診察、その次の診察と日がたつにつれ、「トーカさん、いつ入院するか決めた?」「いつ入院するって話で会社とは進めているの?」と、入院が確定的な予定になってきた。
しかし、とても信頼できる先生だ。トーカの心療内科人生でいちばんの先生と言ってもいい。とても心配してくれている。だから、会社にも「実は、ドクターストップがかかっている」という話をすることができた。先生が言うには、かなりの緊急性です、と。
先生にはとても感謝している。仕事のチームのメンツにも、感謝している。
そしてもうひとつ、感謝する人たちがいて、今日はそれを伝えることができた。
それはまた明日の話。
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