第四十三話 王都防衛戦(前半)

 光の柱が空から降り注いだ。

 戦場の中にあって余りに鮮烈なそれは戦う者達の動きを一時的に止め、誰もがその方向へ視線を向ける。

 そして光が晴れた時に人々はそこに希望を。魔物達は脅威を見出した。

 戦場に降り立ったそれは、聖女を守る為に選び抜かれた騎士の中の騎士……十一人の近衛騎士達だ。

 学園長であるフォックス子爵を除いた全員がこの場に集結し、鋭く前を見据えている。

 その後ろにいるのは人類の希望である聖女エルリーゼと、彼女が通う学園に通う騎士見習いの生徒達だ。(後、何かよく分からない変な眼鏡)

 エルリーゼの左を筆頭騎士であるレイラが守るように立ち、右には聖女から剣を託されたベルネルが立っている。

 その光景に『カラス』は不機嫌そうに眼光を鋭くし、己の読みの甘さを悟った。


「聖女えるりーぜ……到着ガ早スギル……。

イヤ、ソレ以前ニ……何故、他ノ騎士マデ……」


 『カラス』は、エルリーゼが同族である人間達に閉じ込められていた事は知っていた。

 愚かな人間達が一体何を考えているのかは知らないが、ともかくエルリーゼが動けなくなっていた事は彼ら魔物にとっては好機だった。

 勿論自分達が国を襲えばエルリーゼは文字通りに飛んでくるだろうが、そこに騎士はいないと『カラス』は読んでいたのだ。

 何故なら騎士達はエルリーゼを裏切ったのだ。

 ならば当然の心境として、そんな裏切り者を連れて戦場に行きたいなどとは思わないだろうし、第一そもそもエルリーゼが大人数を連れて長距離を移動出来るなどという話は聞いた事がなかった。

 だからエルリーゼが来るならば単騎で来ると思っていたし、エルリーゼ以外が来るならばこんなに早くは来ないはずだった。

 だが想定は完全に間違いであった。

 エルリーゼは遠く離れた場所に自分以外を連れて高速で駆け付けることが出来るし、騎士との不和もまるで感じられない。

 情報が間違っていたのだろうか……それとも和解したのか。

 どちらにせよ、現状は『カラス』にとって最悪なものでしかなかった。


「お、おお……聖女様だ!」

「聖女様が来られた!」

「それに近衛騎士達も!」


 エルリーゼの登場にビルベリ軍が沸き立ち、士気が高まる。

 人類にとっての希望であり、正義の象徴でもあるエルリーゼはそこにいるだけで味方を鼓舞するのだろう。

 何とかこの流れを変えようと『カラス』が暴風を起こす。

 だがエルリーゼが視線を向けるだけで風はピタリと止まり、竜巻となって魔物達の方へ逆走した。

 風に巻き上げられて魔物達が空を舞い、魔物軍に動揺が走る。

 その間にエルリーゼは回復魔法を発動して、傷付き倒れていた全ての兵士を完治させた。



 さてさて、到着しましたビルベリ王都。

 敵の数はこの前のルティン王国よりちょっと多いくらいだろうか。

 結構魔物を狩っていたと思ってたんだが、まだこんなに残ってたんだな。

 ただ、流石にこれで打ち止めかな。

 多分、各地に残ってる魔物を集められるだけ集めて最後の抗戦に臨んだんだろう。

 何せ魔女が学園地下に籠りっぱなしだから、地上の魔物は自力で何とかするしかない。

 ……ま、その健気な最後の抵抗も俺が来たからには無駄になるんだけどな!

 魔物にゃ悪いが折角集まってくれたんだし、さくっと一掃してやろう。

 これが終われば大規模な魔物苛めはもう出来なくなるだろうし、奮発して派手にやってやろうか。

 今回はベルネル達も見てるし、恰好つけて俺TUEEEEE! したい。


「Aurea Libertas(黄金の自由)」


 必殺、海外の恰好いい言葉を叫ぶと技名っぽくなるシリーズ番外!

 今回はことわざではなく、ポーランド王国で機能したとされる貴族支配による民主主義の政治システムだ。

 国王は君臨すれども統治せず。

 このシステムでは国王は頂点に君臨しながらも政治には一切干渉出来ず、完全に排除されたという。

 ぶっちゃけこの場では何の関係もないが、名前が何となく恰好よくて技名っぽいので適当に使っている。

 俺が技名を宣言すると同時に上空へ向けてぶっとい黄金のビームを発射し、それが空で拡散して無数のビームになって魔物達に襲い掛かった。

 味方の兵士さん達をグネグネ避けてビームが次々と魔物を貫き、どんどん敵を減らしていく。


「聖女ノ好キニサセルナ! 殺セ!」


 指揮官と思われるでかいカラスが魔物達に指揮を出している。

 大魔になれるとは、やっぱカラスって賢いんだなあ。

 確かどこかの国の研究によるとカラスの知能は人間の七歳児と同じくらいなんだっけ?

 七歳児っていうと、割と物心ついてる頃じゃん。

 三歳とか四歳の頃の記憶は大人になるとあんま残ってないけど、七歳の記憶って案外残るくらいには知能発達してるぞ。

 少なくとも普通に会話出来るし、ひらがなの読み書きも出来る。

 普通にテレビゲームとかもやっていたし、今時の子供ならば与えればスマホだって使うだろう。

 しかも大魔になったら更に知能は上がるわけで……多分あのカラス、ほとんど人間と変わらないレベルに頭いいぞ。

 賢いカラスに指揮されて、鳥型の魔物が一斉にこっちに飛んできた。

 あー、うん。まあ空から来るわな。

 こっちは俺以外飛べないから、飛べばほとんど守りをスルーして一直線に俺の所まで切り込めてしまう。

 なので俺は軽く跳躍して浮遊し、鳥公達を迎え撃つことにした。

 ま、全体光魔法バーンで終わるやろ。

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