花譜(19/07/15 )

呼吸器のような花びらが

白い風に静かに揺れている

遠ざかるぼくの歩調とは

どこまでもすれ違ってしまうけれど


曇り空へ巻き上がって しだいに

同化するレジ袋に

なぜかぼくはちょっと 憧れつつ

飲みかけの冷たい缶や

燃えていくタバコを とうとう

路上に捨て去ることはできない


午後から100%の ぬるい大雨なのに

ゆっくりと回転していることは

切り傷が目印だから分かる


色の薄い少女が

感情を川に流していく

それは敬虔なひとの祈りとよく似ていて

泥まみれのサンダルを 

ちょっと揺らしていた


彼女は歌っていた

くるくると踊りながら 徐々に

りんかくはフェードアウトしていく

完全な消失のあとに残ったのは

ただの花の香りだけであった


重い夜が止んだ頃

みずからが手放した懐かしさで

渇いていた目の奥がやけに

うつくしく苦しんでいた

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