コロナウィルス狂騒曲

 twitterにて、元看護婦でフォロワーたくさんのネット有名人ぽい人が「アルコール消毒はコロナウィルスに効かない」とかデマ飛ばしてました。政治家まで変なこと言ってました。なんか陰謀論とかも流れてました。


”正しい情報というのは、やはり公的な機関が責任をもって出している情報です。日本なら、厚生労働省や国立感染症研究所ですね。”

 - buzzfeed(後述)


新型コロナウイルスに関するQ&A|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html


”問6 予防法はありますか?

 一般的な衛生対策として、咳エチケットや手洗い、うがい、アルコール消毒など行っていただくようお願いします。”


 ハイ終了。解散。



 ていうと終わっちゃうので、もうちょっとだけ続くんじゃ。


 1月半ほど前に

”風邪などの予防にはうがい、手洗い、マスクというのが日本では常識っぽいのですが、実はこれらのことはほとんど意味がないらしいです。”

 とかいうエッセイの対抗で、普通の風邪や季節性インフルエンザの対処を”厚生労働省や国立感染症研究所”からコピペして書いたばかりです。対処は同じ。


命にかかわる医療デマ 渡るWebはデマばかり(自作品)2019年 12月14日

https://ncode.syosetu.com/n5072fx/



 怪しいデマや陰謀論については、英BBCがデマの一次ソースを探して叩き潰しています。


【解説】 インターネットで広がる偽情報 新型コロナウイルス (日本語) BBC

https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-51290980

 ”新型コロナウイルスにより、130人以上が亡くなった。確認された感染者は5900人を超え、香港などは感染拡大を防ぐため、大陸側からの移動を禁じる措置を発表した。

 しかし中国や世界に広がっているのはウイルスだけではない、偽情報もだ。

 BBCモニタリングは、さまざまな偽情報がどこからやってきたのかを調べた”


 ちょっと注目したのが


”「生物兵器」の陰謀論


 この説を広めた人々の多くは、米紙ワシントン・タイムズが掲載した2つの記事を根拠にあげている。どちらも、イスラエルの元情報機関職員の話を引用している。

 しかし、これらの記事にある主張には根拠が提示されていない。さらに記事が引用するイスラエル関係筋は、ウイルス流出の「証拠やそれを示唆するものは今のところない」と述べている。”


 この「ワシントン・タイムズの記事」自体は、生物兵器説を否定しています。正確には、「こういう話もあるが」と紹介しつつ、別の数人の専門家の否定意見を多く載せています。

 それを誤読したのか、キャッチーな部分を切り貼りして、さもワシントン・タイムズが根拠であるかのように捏造したんでしょうか。

Virus-hit Wuhan has two laboratories linked to Chinese bio-warfare program (ワシントン・タイムズ)

https://www.washingtontimes.com/news/2020/jan/24/virus-hit-wuhan-has-two-laboratories-linked-chines/



”デマにはどう対処する?


ーー「武漢の研究所から漏れた生物兵器のウイルスではないか」「致死率15%の最凶ウイルス」など、デマ情報が拡散され始めています。新興感染症では起こりがちですね。


 新型インフルエンザの時もそうでしたが、SARSの時代と比べて、誰もが自由に発信するようになったことも原因でしょう。SARSの時はSNSは普及していなかったです。


ーー我々メディアもデマ打ち消しをしているのですが、先生方のような専門家が素早く対応してくださるとありがたいです。


 私はTwitterをやっていないんです。忙しい時に色々な雑音が入ってきて、それに返事を書いていると、大切な仕事ができなくなりますから。


 新型コロナウイルスが注目され始めた頃、あるメディアの取材に、「正しい情報をつかんでください」と書いてもらったんです。すると、「正しい情報ってどこにあるのかわからない」という批判がありました。


 正しい情報というのは、やはり公的な機関が責任をもって出している情報です。日本なら、厚生労働省や国立感染症研究所ですね。時間的には少し遅れるかもしれませんが、そこがより正しい情報を出すはずです。


 逆に一番危ないのは、無責任に匿名でSNSで流されているような情報です。責任の所在や出典をはっきりさせずに書いている情報はまず信じない方がいい。


ーー厚労省も一般向けの「新型コロナウイルスに関するQ&A」のページを作りましたね。


 これも以前と比べたらかなり早くなりました。デマは専門家がなんとか打ち消したいところですが、デマにいちいち応対していたら何もできなくなる。難しいところです。”

 - 新型コロナウイルス どれぐらい警戒したらいいの? 感染症のスペシャリストに聞きました buzzfeed

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/ncov2019-okabe


 メディアは”正しい情報ってどこにあるのかわからない”。知っとけよ。と期待しますが、残念ながら、限られた取材期間と予算で適当にタマうって、たまたま「正しい専門家」に当たれば「正しい報道」になりますが、専門外な医師やら怪しい事情通に当たれば「怪しい報道」になります。あるいはウケる視聴率やPVのために意図的に捻(ね)じ曲げることもあります。buzzfeedは私的には「信頼できないメディア」に入ってるので、インタビュー対象の「岡部信彦」で確認しました。二度手間です。



 米国のインフルエンザのほうがヤバい説について。


"全米で1500万人が感染、死者8千人超 過小評価されがちなインフルエンザの脅威


 インフルエンザは日常性が高いことから、危険性が過小評価されがちだという。しかし米疾病対策センター(CDC)によると、インフルエンザによる米国内の死者は、年間少なくとも1万2000人に上る。2017~18年のシーズンには6万1000人が死亡、患者は4500万人に上った。"

 - CNN https://www.cnn.co.jp/fringe/35148772.html


 CDC(アメリカ疾病予防管理センター)ってのは、日本で言う保健所の親玉みたいなやつです。たぶん。


 米企業であるCNNの報道曰く、インフルエンザで死者8千人は普通。今シーズンは終わってないけど、流行年「2017~18年のシーズンには6万1000人」はもちろん、例年の「少なくとも1万2000人」にも達してません。


 ヤバいといえばヤバい数ですが、「(例年の)インフルエンザを甘く見るな」という注意喚起の報道です。全然「大流行」ではありません。

「これを報じないとは何事だ!日本のマスコミの怠慢だ」とか「わざと報じない」とか陰謀論があるようですが、意味がわからないよ。どう考えても|報道する価値(ニュースバリュー)がありません。


 さらに言えば、日本でも毎年1万人の死者がいます。全米で死者8000人の数字をもって「アメリカがヤバい」というなら、死者1万人の日本はもっとヤバいのではないでしょうか。いや今シーズン分は知らないですけど。


”Q10.通常の季節性インフルエンザでは、感染者数と死亡者数はどのくらいですか。


 例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。

 国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。

 また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。”


 - 厚生労働省

 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/02.html#100


 この超過死亡とは何か。ざっくり言えば ”死因のいずれかにインフルエンザあるいは肺炎の記載がある死亡者数” をいくつかの都市で調べ、その確率を全国の死亡者数に当てはめて推計するようです。「死因のいずれか」なので、直接的死因は何か他の病気だったとしても、そこへインフルエンザにかかって体力が落ちて、病状が悪化して死んだものを含みます。

 - 2018/19シーズンにおける超過死亡の評価 国立感染研究所

 https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2471-related-articles/related-articles-477/9235-477r06.html


 中国の死者は結局、元から病気持ちの中年以上の高齢者でした。


”ワクチン接種しようがしまいが、ほとんどの場合、そもそもインフルエンザにかからないほうが多いかもしれません。しかしイザかかったとき、「ワクチン接種を受けずに発症した人の75%は、接種を受けていれば発症を免れた」ことになります。

 まあ、若く健康なら、今の医学なら、発症しても少々寝込むくらいですむかもしれません。しかし高齢者など(ハイリスク群)は「死亡する危険を80%(略)減少させることが出来るとされています」”

 - 前回のエッセイより


 ほぼそのまんまです。新種だとワクチンないので、ハイリスク群の死亡率は高いでしょうが。



医師や看護婦も信用してはいけない(こともある)


 ここは小説を「カクヨム」なので、小説関係で例えてみます。 

 例えば推理小説家がいるとします。何でもいいですけど。そこに「ファンタジーラノベ小説」「そのアニメ化」に関するコメントを求められらたとします。答えられるでしょうか? 逆でもいいけど。ラノベ作家が今年の芥川賞の作品について語るとか。「(純)文学こそ至高。ラノベなどゴミ」とか「活字こそ至高。ネット小説や

電子書籍などゴミ」とか言うかもしれません。「小説家」という肩書だけで、そういう言説が信用に値するでしょうか? 専門違いとはそういうことです。両方できる人もいるでしょうが。



 こういうデマに踊らされるのを、「読解力がない」と言います。コピペして拡散するのも同様です。

 昨年、"「国際学力到達調査」PISA2008で、日本は特に「読解力」の項目で前回より大幅下落し、過去最低の順位を記録した"と報じられました。これに、やれ新聞や書籍を読まないからだとか、スマホばかりいじってるからだとか的はずれなことを言うエライ教授がいましたが、国際平均より低い結果が出たのは、

”◆読解力の問題で、日本の生徒の正答率が比較的低かった問題には、テキストから問題や、テキストのする問題などがあった。

 ◆読解力の自由記述形式の問題において、自分の考えを他者に伝わるようにことに、引き続き、課題がある。”

- OECD生徒の学習到達度調査(PISA2018) 文部科学省

https://www.nier.go.jp/kokusai/pisa/index.html#PISA2018


 例題は、blogのするという問題でした。また、”大幅下落”という新聞記事自体が、OECDや文部科学省の発表『「平坦」タイプ』と異なる歪曲でした。そんな新聞を鵜呑みにするエライ教授をはじめ、調査対象の中高生より「読解力」が低い大人もいるんじゃないでしょうか。



 なお、このメッセージは自動的に消滅する。

 ……じゃなかった、このメッセージは”無責任に匿名で(略)流されているような情報です。責任の所在や出典をはっきりさせずに書いている情報はまず信じない方がいい。”


 上述のように「ワシントン・タイムズが(否定意見を)言ってた」のを「ワシントン・タイムズが言ってた」みたいに変えることもできるので、「出典をはっきりさせている」確認だけでなく、実際に「出典元」まで確認する必要があります。面倒だけど。

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