コロナウィルス狂想曲 渡るWebはデマばかり

命にかかわる医療デマ(上)

 医療と食品、ダイエット(特に食べ物の種類や量)に関わることは、マジで命やQOL※に関わるので、自分や家族を大切にしたいなら、そのへんのTVや本やWebやママ友情報ではなく、情報の信頼性を確認しましょう。彼らは正しさより視聴率やPV、ウケを重視します。

 自分や家族の命やQOLを守るのは、自分しかいません。マスコミやメディアやママ友は責任取ってくれません。

 3年前、2016年に、医療デマ飛ばしてるWebメディアに厚生労働省がキレて話題になりました。その時、医療記事の信頼性の見分け方も話題になったので、知らない方はご一読を。

※QOL:生活の質。命はあっても、寝たきりとか食事制限とかで生活の質が下がるという考え。 (以下「小説家になろう」より転載)



 普段は少々おかしなエッセイがあってもスルーするのですが、ちょっと見過ごせないネタがあったので、批判せざるを得ません。


『実のところ風邪やインフルエンザにはうがいや手洗い、マスクはほとんど意味はないらしい』

 https://ncode.syosetu.com/n5004fx/



 ”風邪などの予防にはうがい、手洗い、マスクというのが日本では常識っぽいのですが、実はこれらのことはほとんど意味がないらしいです。”


 ”まずインフルエンザは飛沫でない「空気感染」リスクもあることがアメリカのメリーランド大学の研究者たちが行った研究でわかっていまして、インフルエンザの感染者が咳やくしゃみをしての飛沫感染ではなく、その患者の吐く息を吸い込んだだけで「空気感染」が起こる可能性があると指摘されたのですね。”


 ”日本政府広報のインフルエンザ対策でも、すでにうがいは挙げられていません。”


 ”またインフルエンザワクチンにしては世界保健機関(WHO)のホームページを見ても、インフルエンザワクチンについて『感染予防の効果は期待できない』と認めています”


 とありますが、調べによると、「うがい」だけあっていて、手洗い、マスク、インフルエンザワクチンはあってません。



「メリーランド大学」「インフルエンザ」で検索して、信頼できるウラを取ります。

インフルエンザは呼吸するだけで感染する? (*1) CareNet 2018/02/02

CareNetは医師・医療従事者・医学生向けの情報サイトのようです。


 ”これまで、インフルエンザの主な感染経路は感染者のくしゃみや咳で飛び散ったウイルスを含むしぶきを吸い込むことで感染する「飛沫感染」か、ウイルスが付着したものを触ることで感染する「接触感染」のいずれかだと考えられていた。しかし、感染者が呼吸するだけでウイルスが周りに拡散し、同じ部屋にいる人に感染する「空気感染」も予想以上に起こりやすいことが新たな研究で示唆された。詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」1月18日オンライン版に掲載された。

(略)

Milton氏は、今回の研究に関する同大学のプレスリリースで「咳やくしゃみをしなくても、インフルエンザ患者が呼吸するだけで周囲の空気にウイルスが放出されることが分かった。したがって、インフルエンザに感染した人が職場に現れた場合には、周囲への感染を防ぐため職場にとどまらせず、すぐに帰宅してもらうべきだ」と強調。”


 PNASがまっとうな論文誌かどうか調べます。「論文掲載された」という箔を付けるだけのために、自分でお金を払って載せるニセ論文誌があるからです。結果はOK(というか、その分野で著名な論文誌は何回か見れば覚える)。


 原著論文へのリンクもあり、abstract(要約)は見れます。英語ですが、googleやbingの翻訳で大意はわかります。

 ざっくりまとめると

 - 「接触感染」「飛沫感染(くしゃみ)」の研究はあるけど、「空気感染」は知られてないので調べてみた

 - 体重・咳の回数と関係があった

 - 症状が出て日が経つと減る

 - 前年と今年にインフルエンザワクチン接種を受けたことに明確に関連した

 - くしゃみや咳をしなくても広がる

 大きくニュースになったのは最後の部分だけです。

 たまたまですが、ワクチンの効果にも触れられています。


 この部分はOK。

 (普段はここまでせず、”医師・医療従事者・医学生向けの情報サイト”っぽいウラが取れたところで良しとしますが)



 厚生労働省の広報を見てみます。

 インフルエンザQ&A (*2)

”Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?

 インフルエンザを予防する有効な方法としては、以下が挙げられます。


 1) 流行前のワクチン接種

 インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されており、日本でもワクチン接種をする方が増加する傾向にあります。

【インフルエンザワクチンの接種について】を参照


 2) 外出後の手洗い等

 流水・石鹸による手洗いは手指など体についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。インフルエンザウイルスにはアルコール製剤による手指衛生も効果があります。


 Q.10: インフルエンザにかかったかもしれないのですが、どうすればよいのですか?

(1) 人混みや繁華街への外出を控え、無理をして学校や職場等に行かないようにしましょう。

(2) 咳やくしゃみ等の症状のある時は、家族や周りの方へうつさないように、飛沫感染対策としての咳エチケットを徹底しましょう。

 2. 咳やくしゃみが出るときはできるだけ不織布製マスクをすること。とっさの咳やくしゃみの際にマスクがない場合は、ティッシュや腕の内側などで口と鼻を覆い、顔を他の人に向けないこと”


 確かに「うがい」はあげられていませんが、「手洗い」「マスク」はあげられています。

 (数年前までは「咳エチケット」に「うがい」が含まれていたようです。)


「インフルエンザ ワクチン」の英語は「Influenza vaccine」のようです。このキーワードでWHOを検索してみます。

 インフルエンザに関するページ(*3) がヒットしました。これも翻訳してみます。


”Prevention

 The most effective way to prevent the disease is vaccination. Safe and effective vaccines are available and have been used for more than 60 years. Immunity from vaccination wanes over time so annual vaccination is recommended to protect against influenza. Injected inactivated influenza vaccines are most commonly used throughout the world.


 Among healthy adults, influenza vaccine provides protection, even when circulating viruses do not exactly match the vaccine viruses. However, among the elderly, influenza vaccination may be less effective in preventing illness but reduces severity of disease and incidence of complications and deaths. Vaccination is especially important for people at high risk of influenza complications, and for people who live with or care for the people at high risk.

(略)

Apart from vaccination and antiviral treatment, the public health management includes personal protective measures like:


- Regular hand washing with proper drying of the hands

- Good respiratory hygiene – covering mouth and nose when coughing or sneezing, using tissues and disposing of them correctly

- Early self-isolation of those feeling unwell, feverish and having other symptoms of influenza

- Avoiding close contact with sick people

- Avoiding touching one’s eyes, nose or mouth


予防

 病気を予防する最も効果的な方法は予防接種(vaccination)です。安全で効果的なワクチンが入手可能であり、60年以上使用されています。予防接種からの免疫は時間の経過とともに低下するため、インフルエンザから保護するために毎年の予防接種が推奨されます。注射された不活化インフルエンザワクチンは、世界中で最も一般的に使用されています。


 健康な成人では、インフルエンザワクチンは、流行しているウイルスがワクチンウイルスと完全に一致しない場合でも保護を提供します。しかし、高齢者の間では、インフルエンザの予防接種は病気の予防にはあまり効果的ではないかもしれませんが、病気の重症度と合併症や死亡の発生率は低下します。予防接種は、インフルエンザの合併症のリスクが高い人、およびリスクの高い人と一緒に住んでいるか、その人を介護している人にとって特に重要です。

(略)

 予防接種と抗ウイルス治療とは別に、公衆衛生管理には次のような個人保護対策が含まれます。


- 定期的な手洗いと適切な手の乾燥

- 良好な呼吸器衛生 – 咳やくしゃみの際に口と鼻を覆い(注:マスク?)、ティッシュを使い、正しく捨てる

- 気分が悪く、発熱し、インフルエンザのその他の症状がある人の早期の自己隔離

- 病気の人との密接な接触を避ける

- 目、鼻、口に触れないようにする”


 "vaccination" は、わざわざ太字になっています。また、WHOでは、「手洗い」が有効と言っています。


 ”世界保健機関(WHO)のホームページを見ても、インフルエンザワクチンについて『感染予防の効果は期待できない』と認めています”

 どこを見たのでしょうか?

 ”予防する最も効果的な方法は予防接種(vaccination)です。”

 と書いてありますが?

 もしかして、自分の主張に箔をつけるために、見もせずにもっともらしくWHOの名前を出しただけ? 他の話題のエッセイも同様?



 まとめると、「うがい」だけあっていて、手洗い、マスク、インフルエンザワクチンはあってません。



 

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