第43話 旅の準備
「あ、おっかえりなさ~いセンパイ! ご飯にしますか、お風呂にしますか、そ・れ・と・も……わた――」
「あ、そういうのいいんで」
「ちょぉっ、そこはちゃんと乗ってくださいよぉ! ……って、何だか疲れてません? 残業で精魂尽き果てたサラリーマンみたいな顔してますよ?」
「ほっとけ。ところで何も無かったか?」
「はい! 極々平凡な時間を過ごしていましたよぉ」
何とも羨ましい限りである。こんなことならコイツも連れて行けば良かった。
「む? おお、帰ってきたんだね鈴町くん。車は問題なかったかい?」
「ええ、近くに停めてあります。途中でガソリンも満タンにしておきました」
「気が利くじゃないか。じゃあこれでいつでも出発することはできるというわけだね」
「そうですね。できるだけ早い方が良いかもです」
また三ヶ木みたいな奴にイチャモンをつけられる前に、ここを出た方が良い良いような気がするのだ。
「でもでもぉ、センパイ! 車があったら実家にも戻れますねぇ!」
「ああ、そうだな。一応それも視野に入れてるよ」
ボイスレコーダーで、妹たちの安否は確認することができたが、いつまでも無事とは限らない。
できるだけ早めに顔を合わせておきたいのだ。
「あれですよねぇ。スキルに瞬間移動とかあれば便利ですのに……」
「あるにはあるだろ?」
「けど使用範囲が狭いじゃないですかぁ。さすがに県を跨いでの移動はできませんし」
そうなのだ。
しかし効果範囲が結構限られていて、何百キロも離れている場所へ瞬間的に移動することはできないようだ。
「しばらくしたらまた新しいスキルとか更新されるかもですけどねぇ」
姫宮の言う通り、そういうスキルが今度出ることを祈ろう。まああったとしても莫大なSポイントを要求されそうだが。
「私も家族に会いたいので、目的地は滋賀県ってことでいいですよねぇ! 愛葉先輩もそれでいいですかぁ?」
「うむ、問題ないさ」
「あ、でも愛葉先輩も実家に顔を見せたいなら、プランに加えた方が良いとおもうんですけどぉ」
「む? あーそれは難しいだろうね」
「へ? ……あ、もしかしてその……私地雷踏んじゃったですか?」
恐らく姫宮の中では、先輩の家族がすでに亡くなっているという想像が働いていることだろう。まあそういう可能性も無いことはないが、一応俺が説明をしておく。
「先輩の家族は海外に住んでるんだよ」
「え? あーなるほどぉ、それで……」
「そういうこと。さすがに車一本じゃ行けねえしな」
飛行機は飛んでないし、向かうとしたら船か、自家用の飛行機などを飛ばすしかない。
「いつ出発する予定なんですぅ?」
「先輩、決めてます?」
「いいや。それを決めるのもギルドマスターの仕事ではないかな?」
あーやっぱそうなるんですね。何となく分かってましたけど。
「別にこの街でやり残したことはないですし。二人はどうなんです?」
「私はセンパイが傍にいるだけで満足です! きゃっ、言っちゃったー!」
はいはい。相変わらずあざといですね。
「そうだね。ボクも特に未練はないかな。この街での情報収集も大分やったことだしね。それに旅をするというのも乙なものだ」
どうやら二人はいつでも出立可能ということだ。
「じゃあ今日はちゃんと身体を休めて、明日の朝一から出発しますか」
「オッケーでぇす! じゃあわたしは明日持ってくものを整理しときますねー」
「うむ、了解した。ではその前に不要なものを処分しておいた方が良いな」
二人はそう言って各々旅支度をし始めた。
俺もまた服や日用品などの選別を行い、次に三人分のステータスを改めて確認しておくことにする。
鈴町 太羽 レベル:58 スキルポイント:8
体力:2350/2350 気力:2950/2950
筋力:192 耐久性:161
特攻:G%?S 特防:256
敏捷:230 運:30
ジョブ:死神(ユニーク)
スキル:死眼(ステージⅢ【死線】・【死界】・【死覚】)・気力自動回復S・鑑定B・状態異常耐性A・気配感知B・アイテムボックス拡張B・鷹の眼B・鑑定妨害A
コアモンスター討伐数:16
討伐ポイント:5078350
称号:魔眼持ち・ドラゴンスレイヤー・瞬殺魔・モンスターハンター・ギルド『サーティーン』・ギルドマスター・稼ぎ頭・達人
愛葉こまち レベル:37 スキルポイント:8
体力:800/800 気力:1450/1450
筋力:83 耐久性:81
特攻:84 特防:90
敏捷:88 運:80
ジョブ:錬金術師
スキル:錬金A・投擲B・鑑定B・状態異常耐性B・気力自動回復C・アイテムボックス拡張B・漂流C・アイテム変化B
コアモンスター討伐数:1
討伐ポイント:23500
称号:探究者・ギルド『サーティーン』・寄生プレイ・錬金マスター・情報収集者
姫宮 小色 レベル:39 スキルポイント:9
体力:1100/1100 気力:1520/1520
筋力:92 耐久性:98
特攻:213 特防:120
敏捷:92 運:20
ジョブ:悪魔(ユニーク)
スキル:不現の瞳(ステージⅡ【幻視】・【魅了】)・鑑定B・鑑定妨害A・状態異常耐性B・アイテムボックスB・使い魔召喚C
コアモンスター討伐数:9
討伐ポイント:17900
称号:魔眼持ち・魔性の女・お宝好き・飛行のスペシャリスト
三人ともが、なかなか成長した良いギルドなのではなかろうか。
これだけのレベルがあれば、そう簡単にモンスターに殺されることもないだろう。
特に姫宮の《不現の瞳》で、新しく備わった【魅了】は男にしか効かないらしいが、これが超強力だ。
自分よりもレベルの低いオスのモンスターなら従わせることができるし、人間の男も同様だ。これさえ使えば、無理に戦わずとも手駒として使えるので反則級である。
また先輩も《錬金》がAになっているので、さらにレア度の高い物を作ることができるようになった上、ほとんど失敗もしなくなっていた。
ギルド【サーティーン】は、少数ながらもバランスの良いチームになっているといえるだろう。
ただ世界が変貌してから結構経つので、それなりにレベルを上げている者たちも増えてきている。
ここまで生き残っている『ギフター』は、やはり強者といえるくらいのレベルになっていると思う。
モンスターはともかくとして、快楽殺人者みたいな『ギフター』と接触した時は注意が必要だ。
俺はともかく二人は、本格的な対人戦はまだ無いからである。
たとえレベルで上回っていても、相手が人間ということで気圧され逆に殺されてしまうことだって有り得るだろう。
だからこれからは未知なる外を歩いていくこともあり、どこに凶悪な奴らが潜んでいるとも限らない。
十分に注意し、できる限り二人を単独行動させないようにしなければ。
幸い俺が傍にいれば、相手がどんだけ強くとも時間次第で殺すことは可能だから。
でもあれだな。RPGといえば、やっぱ回復職は欲しいところだよな。
回復役がいるのといないとではパーティの生存率が大幅に違う。怪我や病を治せるような『ギフター』がいれば心強いのだが、あいにくそんな輩には心当たりもない。
そう考えれば不死身属性を持っている吸血鬼の美神ミミナは羨ましい。何度殺されても生き返るようなスキルは無敵過ぎる。
ただもし一生死ねないとなると考えものではあるが。
永遠に生き続ける業を背負う覚悟があれば大丈夫なのだろうけど、俺は普通に寿命を全うして死にたいと今は思っている。
ただ理不尽や不条理に命を奪われたり、傷つけられるのは嫌だ。
だからこそ回復職の重要性がより際立ってくる。
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