第39話 ヒロイン爆誕!!
◇ ◇ ◇
――『ルチル・ヒューシャ』に
それは、前世の記憶を持ったまま生まれてきたってこと。俗に言う転生者ってことね。
どうしてこうなったかはわたしにも分からないけれど、でもとってもラッキーだったと思う!
だって、大好きだった乙女ゲームの世界に生まれ変わることができたんだもんっ。
初めて、鏡の中に映る幼い自分の姿を見た時に衝撃を受けて、これってヒロインのスチルそっくりじゃんってことで記憶を取り戻したんだ。
その時はもう嬉しくて嬉しくて、思わずやったーって叫んじゃった!
しかもプレイした乙女ゲームの中で一番好きでやり込んだ『恋の華が咲くまで~学園編~』の世界のヒロインとかっ、最高過ぎないですか!!
いつも画面越しに見て羨ましいなって思っていた、庇護欲をそそる超絶可愛い可憐な美少女がわたしってっ、すごくない!?
――前世のわたしは……まあつまらない奴だったよ、うん。
どこにでもいる平凡な女の子で、クラスでも埋没していたしね。
顔も頭の中身も特別に悪いってわけではないものの、努力してどうにかなるものでもなかった。
何をしても無駄だって、色々諦めてた。当然、彼氏もいなかったよね。
でも、今世は違う。誰もが私を見て可愛いって言ってくれるし(わたしもそう思うっ)、両親にも溺愛されている。
ヒロインの、と言うか現世でのわたしの両親はシナリオ通り大きな商家を営んでいてとっても裕福で、欲しいものは何でも買い与えくれた。滅茶苦茶好い人たち。
全く、前世の親とは大違いだよ……アイツらは最悪、思い出したくもない。
いっつも派手に夫婦喧嘩してたし、何かあるとすぐ八つ当たりしてくるし、お金にもケチくさくて煩かったし。
お前はダメだ出来損ないだっつって貶してくるし、褒められたことなんてない。
物理的に殴られはしなかったけど、精神攻撃が酷くてヤバかった。
ま、いわゆる毒親って奴?
本当、最悪だったよね。
だから最初にここが『恋の華が咲くまで~学園編~』、コイサクの世界だって分かった時は、前世の知識を生かして、知識チートでもしてやろうと思ったんだ。誰も見たことのないような新商品を作ったら面白いかなって。
今の優しい両親のため、何か役に立つことをしたかったんだよねぇ。
だけどそう上手くはいかなかった。
ここには既に、わたしが考え付くような便利家電や美容用品、美味しい料理のレシピまで揃っててさ……わたしの拙い知識では入り込む余地はなかったんだよ。
でも両親はその気持ちだけでも嬉しいって言って褒めてくれたし、喜んでくれた。
そういえばコイサクって日本の乙女ゲームだし、異世界が舞台とはいえ生活環境はほぼ変わらない設定だったっけ?
電力も魔力や魔石で代用できるんだもんね、うん。
ちょっとがっかりしたけど、何もしなくても快適なのは楽だし嬉しい。
まぁゲームのメインは攻略対象との恋愛だしね、別にいっかって思ったんだ。
それにシナリオ通りだと平民なのに膨大な魔力量を持つ子がいるって言う情報を掴んだ(と言うか、ヒロインの両親に掴まされて借財を盾にごり押しされた?)ヒューシャ男爵家から、もうすぐ迎えが来るはずなんだよね!
最近になってわたしの魔力が発現し、余りの多さにびっくりした両親が詳しく調べるためにと神殿へ連れてってくれて、そこで精密鑑定をしてもらった結果、無事にヒロインと同じ光魔法の素質があるって確定したんだ。その時はホッとしたよね。
これで平民から貴族のお姫様にジョブチェンジして、王立学園で乙女ゲームのイケメン達と皆が羨むようなキラキラした恋愛をすることになるのよっ、素敵じゃない!?
コイサクのヒロインとはここまで全く同じ道筋を辿っているし、きっとこれからもこの世界はゲームのシナリオを踏襲していくんじゃないかなっ。
と、言うことはですよっ。
今後のわたしの未来って、バラ色で確定ってことじゃん!?
攻略対象のイケメン達に言い寄られ、超モテモテの学園生活を送る未来が確約されてる人生って……はぁ、何それもう楽しみすぎる!
――あぁ、早く王立学園に行きたいなっ。
予定通り十歳の誕生日に無事に男爵家へと引き取られ、 わたしの名前はルチル・ヒューシャになった。
今日からここで、男爵令嬢として生きていく。
後は夢の学園生活を妄想しつつゲーム開始の三年後を待つのみってなったんだけど、わたしは王立学園に入るための勉強をさせられていた。
新たに父となった男爵はこれでも必要最低限だとか言ってたけど、結構ハードな内容だったよ。特に淑女教育とかがね……あんまり辛かったから、ヒロインの魅力を生かして先生達におねだりしたら、仕方ないですねと苦笑しながらも甘めに合格点を出してくれるようになったっ。
さすがヒロイン、魅力値だけは初めからチート級なだけあるっ、効き目がすごい!
ヒューシャ男爵もわたしの可愛さにメロメロになってからは必死に勉強しなくて良いって言ってくれるようになったし、それからの男爵家での日々は楽しく、飛ぶように過ぎて行き……。
そして数年後、十三歳になったわたしは高い壁で囲まれた白亜の宮殿前にいます!
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