第14話 既に疲れました……
……だって
やはりフレデリック様がおっしゃったように、
「……分かりましたわ。信じてもいいでしょう。でも、ひとつ条件がございますの。叶えていただけますかしら?」
それでも、無条件で信じていただけるって訳では無いのですね。
今すぐ色々と反論したかったのですが、ここは涙を呑んで大人な対応をしましょう……貴族令嬢らしく、冷静にね!
「こほん。それで条件とは、何ですの?」
「
「まあ。転入……ですか?」
「ええ。それがお二人のことを信じる条件です」
「しかし、リリー。こちらに来られると貴族としては色々と不都合もあるかと……社交なども疎かになってしまいますし、貴女の将来のためになりませんよ」
「いいのです。フレデリック様のいない学園に通っても仕方ありませんもの」
「ああ、そんなに僕のことをっ……嬉しいよ、リリー!」
「フレデリック様!」
感極まって互いの名を呼び手と手を重ねると、紳士淑女としては少し近い距離で熱く見つめ合う恋人達。
あ、甘ったるいですわ……。
お二人の周りにハートが飛び散り、ピンクのオーラが溢れるのが可視化できそうです。
……もう、そんな条件などなくともこのお二人、既に仲直りしているんじゃありませんの……
「でも、確か魔法学院では、途中入学は認められていなかったように記憶しておりますが……?」
「ええ、分かっておりますわ。ここは入学にも権力が及ばない場所ですし。ただ、転入可能となる裏技があるらしいんですの」
「そう、なんですの? フレデリック様はご存知でして?」
「いえ、知らなかったですね。つまり、その裏技を調べるのが条件って訳ですね?」
「ご名答ですわ」
皆まで言わずとも正確に意図を読み取ってくれた婚約者にコクリ、と満足げに頷く。
「分かりました。他でもない貴女の頼みです。何とかしましょう」
「まあ、ありがとうございます。
「ええ、期待していてください!」
「ふふふっ、勿論ですわ。それではフレデリック様、ヴィヴィアン様。今日は有意義なお話が出来て嬉しゅうございました」
「ええ、こちらこそ。誤解が解けて良かったですわ」
「そうですわね。では、この辺りで失礼致しますわ。ごきげんよう!」
そう言って輝かんばかりの笑顔を振りまくと、意気揚々と帰っていった。
言いたいことだけ言って、風のように去っていった友人を、やれやれと息を吐きながら見送った。
「はぁ……疲れましたわ」
「そうですね。朝からこんな不意討ちって、心臓に悪いです」
「ええ、本当に。変に胸がドキドキする出来事は御免ですわ。色々と納得出来ないこともございますが、今回はアリス達の機転のおかげで助かりましたけれど……」
「同感です。そのせいで、ヴィヴィアン嬢には不本意な思いをさせてしまいましたが、貴女のその真っ直ぐな性格に僕は救われました。ありがとうございます」
ずるいですわ……そんなにホッとしたお顔をなさって素直に頭を下げられますと、もう怒れませんもの。
私も甘いですわねぇ。
「もう、よろしいですわ。ただ、リリアンヌ様があれだけ素早く動かれたのです。
「シリル様にも、ヴィヴィアン嬢からお手紙でご説明されたのでしょう?」
「ええ、でも彼の事ですからご納得されていないと思いますの……。もう当面は、ヒロインさんどころではないですわ」
「そう……ですね。とっても勘弁して欲しいですけれど、シリル様相手ですとリリアンヌの時のようには簡単に誤魔化されてくださいませんでしょうし」
「ええ、
「はぁ、ですよねぇ。理詰めでこられると、全部話さないまま誤解を解くと言うのも厳しいような……? う~ん……困ったなぁ」
「でも、協力していただきますからね!」
「勿論、分かってます。今回、ヴィヴィアン嬢にはその身を張って助けてくださいましたし。ただ、どうやれば納得してくれるのかが分かりませんけれど……とりあえず、僕からも手紙を書いてみようと思います」
「それはいいですわね。お願い致しますわ」
「はい、お任せください。じゃあ、遅くなりましたが授業を受けにいきましょうか」
「……それも憂鬱でしてよ。初日に続き、不真面目な学生だと思われていることでしょう……気が重いですわ」
「が、頑張りましょう! これから挽回すればいいんですよ!」
「でも、初対面の印象ってとっても大事だと言いませんこと?」
「ううっ、そうなんですけどね。何とか言い訳を考えますから!」
「まあっ。フレデリック様、頼りにしていますわ」
「あはははは……お任せください」
若干、フレデリック様の目が泳いでいるのが気にならないこともないのですが……一応、信頼しておきましょうか。
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