ある朝、目がさめると

あきかん

起床 1回目

ある朝、目がさめるとそこは自分の部屋ではなかった。

枕元にある目覚まし時計、煩雑におかれた小説と飲みかけのお茶。そして何よりちゃぶ台の上に置かれた書きかけの自作小説が自分の部屋であると物語っている。しかし、妙な違和感がある。

タバコに火をつけて、深く吸った。

(変な夢でも見たせいかな。)

わたしは、とりあえず自分を納得させて朝の支度を始めた。


壁掛け時計を見るといつもより10分も進んでいる。

遅刻するような時間ではないが、妙に焦る時間でもある。いつもはうるさい目覚まし時計も今日に限ってはうんとも寸ともいわない。


朝食は食べたい。食べる事だけが楽しみの人生だ。

昨日の残りの白飯は茶碗に盛ってラップをしてある。味噌汁はインスタントでよいか。おかずを探しに冷蔵庫の扉を開けた。

せっかく作ったカルパッチョがない!あれは自信作だったのに。

おかずになりそうな物は冷蔵庫に無かったので、魚を焼くことにした。


うちにはガスコンロとフライパンしかなく、魚焼きグリルなんて高尚なものも当然ついていない。

フライパンで魚を焼く際に、個人的なコツが1つある。魚に小麦粉を軽くまぶすのだ。

魚をフライパンで焼くと身が崩れやすい。そのために小麦粉をまぶして補強するわけだ。


鮭をフライパンで焼きながらタバコに火をつける。

焦って食べる飯は旨くはない、不味くもないが。

せっかく食べるのならば味わいたい。

タバコの煙を換気扇に吹きかけた。


焼けた鮭を皿に盛り、昨日のご飯をレンジにかける。その間にフライパンをざっと洗い水につけてお茶を入れる。

ご飯が温まったらインスタントの味噌汁にお湯を入れれば朝食の完成だ。


朝食を食べ終えると、出かけるまで後20分を切っていた。

歯を磨き顔を洗う。便所に入り、用を足す。敷いた布団を片付け、会社へ行く支度をする。

ワイシャツに袖を通しネクタイをする。スーツを纏い腕時計を装着。鞄の中身を確認する。手帳の中身は移動しながらで良いかな。

定期と鍵を握り締めて、再度腕時計で時間を確認する。いつも通りの時間だ。


家のドアを開けた。陽光がえらく眩しい。

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