第2話
「分かりました。本当にお父さんとお母さんと妹は助かるんですね?」
「ええ、お約束しましょう。それでは異世界転生にするにあたっていくつかのサービスをしたいと思います」
「サービス?」
「はい。異世界は地球と違って危険な場所です」
「例えば?」
「剣と魔法の世界です。魔物もいます」
「つまりファンタジーな世界ということですね」
「ええ、文明レベルも中世に近く医療も発達していません」
「それって……、生きていく上でかなり辛いのでは?」
「そこで、サービスをつけるというわけです。せっかく、こちらの条件を呑んでくれたのですから」
「なるほど……」
「まずは生きていく上で必要なのは健康ですので、自分で薬を作って病気を自分で治せるようにポーションを作れる才能を付与致します」
「生産系の能力ということですね」
「はい。そうなります」
メルルさんは、私の言葉に頷きながら指先を軽やかに動かしている。
おそらくあれで私に能力を付けているのかも知れない。
「次に魔物と戦うための力ですが、魔法を使えるようにしておきましょう。あとは転生してからすぐに死んでも行けませんので身分も考えないといけませんね」
「身分ですか?」
「はい、神無月朱音さんが転生する世界では中世ヨーロッパ風の世界感となっており貴族がいます。そうなると、貴族に転生するのが一番、好ましいと思いますが?」
「それなら王族と公爵家は排除でお願いできますか? あと男爵や騎士爵は大変そうなので、それも対象外で」
「分かりました。それでは子爵以上、公爵未満で転生先を設定しておきましょう」
話が一段落ついたところでメルルさんは私を見てくる。
「それでは、異世界で良き人生を送ってください」
それが神無月朱音として私が最後に聞いた言葉だった。
数日間高熱を出して前世の記憶を取り戻したのは5歳の時。
目を覚ました私を両親はすごく心配してくれた。
だけど、そんな両親を見て私が最初に感じたのは罪悪感であった。
何故なら、本来のシャルロット・フォン・エルトール伯爵令嬢とは別の存在になっていたから。
本当は打ち明けるべきだったのかもしれない。
何日も、転生してきたことを伝えるべきかと迷い悩んだ。
でも、真実を告げた所で、それは自己満足に過ぎないのでは? と両親をただ悲しませるだけと思い打ち明けないことに決めた。
そして私はシャルロット・フォン・エルトールとして暮らすことを決めた。
それから数年が経って妹が生まれた。
妹が生まれてから、お母様の体調は芳しくない。
いつも通り暖炉のあるリビングに向かう。
部屋に入ると妹のセリーナが寝ているベビーベットが目に入った。
「お母様、今日も薬師ギルドの方が来ていました」
「そう……」
元々、お母様は薬師をしていた。
でも今は休業している。
薬草の見分け方は教えてもらったけど、調合の仕方は見ていただけ。
だから作り方はわからない。
メルルは私にポーション作成と魔法の力を付与してくれたけど使い方が分からなかった。
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