第3話 コラボ!JK?

「売れ筋商品揃えないと、売り上げがな…」

「女子高生だな」

「あ?」

「コラボ商品だ」

「何言ってんだ?」

「ギャルのハートをゲットだ」

「あ?あぁ、分かった。また安直な発想だな」

「知事と同じだよ」

「よせよ。ほんとになったらどうすんだよ」

 交番の巡査の会話。しかし、大して間を置かずに、それが現実のものになる。

『現役女子高生と県警がコラボ!』

『とろけるババロア』

『ピーポースペシャル♡』

 ババロアがとろけたら…いったいなんなんだ。


「ポリさん、また考えてきた。『プリン・ボルチモア』」

「ポリさんはやめろ」

「じゃあトオルさん」

「下の名前で呼んでいいのは彼女だけだ」

「へー彼女いんだ」

「いない。だから、ちゃんと苗字で呼べ」

「えー、いいじゃん、トオルちゃん。なんなら、彼女になってあげてもいいよ」

「未成年に興味はない」

「うそばっかり、興味シンシンのくせに。まあ、しかたないか。捕まっちゃうもんね、女子高生と付き合ったりしたら」

「で、その『プリン・ボル』なんとかってのは、どんなもんなんだ」

「『プリン・ボルチモア』。いいネーミングでしょ」

「いいか悪いかよく分からん」

「断然いいじゃない。アメリカの田舎の手作り感満載で。ステラばばあのクッキーみたいなもんよ」

「ばばあ言うんじゃない」

「最近のプリンってさあ、妙にやらかいのよね。もっとガツンとした食感が欲しかったわけ」

「ぷっちんプリンはそれなりに食べごたえがあるぞ」

「へー食べるんだ、プリン。まあ、ぷっちんプリンは別もんだからね」

「別もん?」

「そこ、追及しない。でさ、試作品作ってきたから食べてみてよ」

「手回しいいな」

「あっ、署長さん、署長さん!署長さんも一緒に食べようよ」

「こら、気安く呼ぶな」

「あー、行っちゃったじゃない」

「署長はこれから本部で会議だ。手を振っていただけただけ、ありがたく思え」

「まあ、いいや、おっさんは。さあ、トオルちゃん、食べてみそ」

「石川だ、石川巡査長」

「へー偉いんだ。チョーさんじゃん」

「試験に受かればみんななる」

「えー、試験あんの。ポリ、大変だね」

「いいから。スプーンないのか、スプーン」

「はいはい」

「なんだ、ミッキー付いてるぞ」

「TDLで買ってきた。マイスプーン。いまどき、プラだめっしょ」

「マイスプーンって」

「あー、洗ってある、洗ってある。って、洗ってない方が良かった?」

「うるさい」

「…どお?」

「まあ、普通に旨い」

「もうちょっとないの?」

「まあ、確かにぷっちんプリンとは違う」

「そうじゃなくて」

「うーん、そうだな、うん、一口が重いような」

「ガツンときたでしょ?」

「つまってる感じがする」

「そこよ、そこ。食べごたえっていうやつよ」

「うん、そうだな。うん、旨かった」

「じゃあ、採用?」

「上に諮ってみる。手順書はあるのか」

「レシピよ、レシピ。あるわよ、ほら」

「ほー、図入りか。預かっていいのか」

「できれば、プレゼンしたいわね」

「まあ、そうだな」

「まず、食べてもらわないと」

「分かった。手配しよう」

「話が早いねえ。さすがチョーさん」

「石川だ」

「はいはいトオルちゃん」

 こうして、次々とコラボ商品が店頭…交番に並んでいくのだった。


「ソーラー発電はうまくいってるのか?」

「蓄電池が配備されていないので、発電したものが駄々漏れです」

「駄々漏れ?」

「最大発電時のオーバーフロー分が、東電線に逆流してるんです」

「逆流って、東電側は大丈夫なのか」

「逆流遮断装置を随時導入する予定です」

「そんなものを据え付けるぐらいなら、蓄電池を入れろ」

「蓄電池は、ちょっと高すぎるものですから」

「コンビニ側に負担させればいい」

「基本二十四時間営業とはいえ、出動時は閉店しますから、平準化すると現状ではコンビニとしての稼働率が低く、コンビニ側に強く要望することができません」

「出動時に閉店というシステムはなんとかならないのか」

「人員が足りません」

「人員増に向けた収入を得るためのコンビニ化だろう」

「多分に知事のパフォーマンス色が強い事業ですので、そううまくはいっていません」

 経理部内で交わされる不毛な会話…

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