後日談(8) 六大魔王と女神教(三人称視点・キャラが多く、誰がしゃべっているのか分かりづらいので、脚本型にしてあります)。


 後日談(8) 六大魔王と女神教(三人称視点・キャラが多く、誰がしゃべっているのか分かりづらいので、脚本型にしてあります)。



カルカディナ「……最近、邪神教の勢力が、アイジア地方を中心に、膨れ上がってきている」


 ここは、六大魔王の一人『カルカディナ』の居城。

 周囲には、六大魔王の内の5名……つまり、全員が集まっている。

 『カルカディナ』『エタナル』『コクスイ』『ベテロ』『キジャク』

 そんな『5名の魔王』と、

 『女神教の重鎮であるパラサイ』。

 その6名が、円卓を囲んで、定例会議を行っていた。

 ちなみに、全員、女性。

 この未来世界において、実力者はだいたい女性である。


 『カルカディナ』の言葉に、

 『コクスイ』が、


コクスイ「それって、あいつらが『魔王の種』を回収しているって話?」


カルカディナ「それも関係している。女神教の潜入捜査官が入手した情報によると、やつらは、『魔王の種』を使い、『コイチゴ・ギガロ・カノープス』という名の化け物を召喚し、その足元にかしずいたらしい」


 実際に召喚された究極邪神はセイバーリッチなのだが、

 蝉原の情報操作によって、六大魔王は、超苺(こいちご)のことを、

 邪神教によって召喚された邪神だと思い込んでいる。


コクスイ「コイチゴ……聞いたことがない邪神ね」


カルカディナ「――『とてつもない力』と、『穢(けが)れしかない邪悪な魂を持つ化け物』らしい」


ベテロ「私が聞いた話とは違うわね。コイチゴは、『悪魔のような女』と聞いたのだけど?」


キジャク「それは、コイチゴの配下だろう。ベテロ、お前の情報は、いろいろと混じっているな。あと、私が得た情報だと、コイチゴは、常に冷静沈着(れいせいちんちゃく)で、しかし、常にほとばしるような殺気を放つ稀代(きだい)の豪傑(ごうけつ)らしい。その『静かな瞳』は、常に大局を見ているようで、一睨(ひとにら)みされれば、どれほどの強者であっても、背筋が凍るとか」


カルカディナ「捜査官からの情報を盲目に信じる気はないが……もし、すべてが真実だった場合、コイチゴは、下手をしたら、我々よりも強大な力を持つ可能性がある」


 そこで、六大魔王の一人『エタナル』が、

 行儀(ぎょうぎ)悪くドカっと円卓に足を乗せて、


エタナル「……私より強い召喚獣なんか存在しねぇよ。つぅか、いいかげん、鬱陶しすぎるだろ、邪神教の連中。ハエみたいに、ぶんぶん、ぶんぶん飛び回りやがって……そろそろ本気で狩るか……」


カルカティナ「甘く見ない方がいい。今の邪神教は、コイチゴという邪神の後ろ盾を得ている」


エタナル「そうビビるなよ、カルカディナ。たかが召喚獣程度、どうってことねぇ。私が殺してきてやるよ。そのコイチゴとかいう邪神」


カルカディナ「エタナル、あなたが強いのは知っている。けど――」


エタナル「私はなぁ、カルカディナ。邪神教なんていう、カスみたいな組織のせいで、『争奪戦(龍の女神の報酬を求めて争う聖戦)』に遅れが生じている現状が許せねぇんだよ。私は、さっさと、あんたら全員をぶっ殺して、龍の女神から報酬をもらいたいんだ」


 エタナルは、『とある理由』で、魔王同士の戦争に集中したいと考えている。

 しかし、邪神教とかいうゴミのせいで、その戦いに集中できない。


 邪神教は、犯罪者の巣窟(そうくつ)みたいなもので、

 表でやっている『邪神崇拝(じゃしんすうはい)』もそうとうな悪なのだが、

 裏では、麻薬の売買であったり、違法売春であったり、

 そういう『無数の悪事』に手を染めている、世界のケガレ。


 邪神教を放置したまま『六大魔王内での戦い』に勝利しても、

 その戦いで弱ったところを、横から邪神教に突かれる可能性が高い。



 ――と、そこで、

 女神教の重鎮(じゅうちん)である『パラサイ』が、


パラサイ「邪神教は、我が女神教の宿敵。どうにか、完全排除すべく、日々、努力を続けてきましたが、やつらは、数が多く、狡猾(こうかつ)で、闇に潜むことを得意としている、まるでゴキブリのような連中。六大魔王の地位につかれている皆々様の御助力(ごじょりょく)がなければ、我々だけでは一掃できませんゆえ、どうか、お力をおかしいただきたい」


 そう言って頭を下げる。


 『女神教』と『六大魔王』は、まあまあ仲よくやっている。

 女神教の理念は『龍の女神の信念を遂行(すいこう)すること』という、かなりあやふやなもの。

 その『あやふやさ』を逆手にとり、裏で好き勝手をしている女神教徒もいるのだが、基本的には『宗教(心の支えとして、すがりつくもの)』としての役割をはたしている。


 魔王は力で国民を守る。

 女神教は、精神的に国民を支える。


 そうやって、この世界はまわっている。


エタナル「パラサイ、心配するな。邪神も、邪神教も、私が叩き潰してきてやるよ。『本物の大魔王』の力を教えてやる」


 エタナルの存在値は500。

 間違いなく世界最高峰の魔王。


 だから、おごっている。

 自分より強い存在を想像することが難しい。


 ――と、そこでエタナルは、


エタナル「あ、そういえば、話、変わるんだが……六番目をどうする? このまま、五人で六大魔王を名乗っていくってわけじゃないよな? そんなの、マヌケすぎるんだが」


カルカティナ「魔王ユズを、六番目に迎えようと思っている」


ベテロ「最近うまれた魔王ね」


キジャク「諜報員(スパイ)の情報によると、エタナルやカルカディナに匹敵する力をもっているらしい。本当かどうか、マユツバものだが」


エタナル「この私が、ヒヨッコ魔王に負けるわけがねぇ」


カルカディナ「どっちが強いかなど、実際に殺し合ってみないと分からないが……若い魔王に負けるほど耄碌(もうろく)していない、とは思っている」


ベテロ「確か、邪神コイチゴが召喚されたのは、魔王ユズの領地内じゃなかったっけ?」


キジャク「ああ、その通りだ。……というわけで、エタナル、もし、本当に行くのであれば、邪神コイチゴを殺すついでに、魔王ユズにも話をつけてきてもらいたいのだけど?」


エタナル「……なんで、この私が、使いッパシリみたいなマネしないといけねぇんだ……と言いたいが……まあ、別にいいや。魔王ユズの顔も見てみたかったしな。もし、生意気ほざくようなら、ぶん殴って、どっちが上か教えてやる」



 そう言い捨ててから、

 エタナルは、カルカディナの居城から出立(しゅったつ)した。


 そんなエタナルを見送りながら、

 女神教の重鎮『パラサイ』は、心の中で、


(……伝承によれば、邪神は、『龍の女神』にも匹敵するという話……邪神が本当に召喚されたのであれば、おそらく、エタナルでも勝てないであろう。神を侮(あなど)ってはいけない。……とはいえ、エタナルは強い。そう簡単に殺されはしないはず……ヤツには時間稼ぎの役割を務(つと)めてもらい、その間に、『熾天使(してんし)』の召喚準備を進めるのが吉……すでに、準備は整っている……『魔王の種』を回収しているのは、邪神教だけではないのだよ……くくく……)

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