74話 貴様のどこが一般人だというのか。


 74話 貴様のどこが一般人だというのか。


「あなたは……センエース……か……?」


 そんなゾーヤの呼びかけに、

 英雄は胸を張って応える。


「ああ。量産型汎用一般人センエースさんとは、まさに俺のことだ。どうだ? どこにでもいそうだろう?」



 全身に狂気の神々を纏い、

 虹色の神気を放ちながら、

 ヒーローとしての矜持を背中で語りつつ、

 楽しいことを言う一般高校生のセン。


 ゾーヤは、センの言っていることを理解するのに苦労した。

 しかし、センエースが、

 『かなり特殊な性格の持ち主である』、

 という点に関してだけは報告を受けていたため、

 どうにか、彼の奇怪な言動を飲み込んで、



「……救援……感謝する……心から……」



 みっともなく、大粒の涙を流しながら、

 頭からっぽで、震えながら、


「ありがとう……」


 無意識のうちに、頭を垂れながら、うずくまり、

 胸の奥からあふれる感謝を、そのまま口にする。


 これほどまで素直に、感謝の言葉を口にしたのは、

 ゾーヤの人生で初めてだった。

 打算と謀略の世界で生きてきた彼女にとって、

 『あふれ出る感謝』を『ただ垂れ流す』というのは、

 極めて貴重な初体験だった。


 そんな彼女を尻目に、

 センは、シレっと、


「あんたを助けにきたんじゃない。二体目のアウターゴッドをゲットしにきただけだ。よって感謝はいらねぇ。言われても困る。つぅか、おかげで、こうして、ほんの束の間とはいえ、あの『キチ〇イ丸出しのヤベェ女共』から離れて、自由になることができた。『アウターゴッドを捕獲するまで』という、わずかな時間だけだが、しかし、それでも、ちょっとした息抜きにはなる。というわけで、むしろ、こっちが感謝している」


 そう言いながら、軽くストレッチをはさみつつ、


「超神虹気をマスターしたことで、容量がだいぶ増えた。もう、2・3体、アウターゴッドを装備しても処理落ちはしないっぽい。というわけで――」


 センは、ギを睨みつけ、


「てめぇも俺の手持ちの一部にさせてもらう。文句は受付けねぇ」


 そんなセンの問いかけに対し、

 ギは、少しだけ、何かを思案するような間をとってから、


「……できると思うか? 脆弱な人間ごときに、この私が負けると、本気で思うか?」


「どうやら、お前は、相当、生命力が高いタイプっぽいが、しかし、それがどうしたと俺は言いたい。いまさら、その程度の絶望が、俺の前で、最後まではしゃげると決して思うな。俺の主人公補正はエグいぞ。仮に、お前の方が強かったとしても関係ない。どうせ、ピンチになれば、俺は、また2・3回ほど覚醒する。状況しだいでは、5・6回覚醒することだってありえるだろう。つまり、どういうことかわかるか? 俺は、俺より強い程度の雑魚には負けないってことだ」


 言い放つと、オーラを強めて、


「俺に不可能はあんまりない。俺にとってのお手上げ案件は『婚姻生活の継続』だけだ」


 そう言い捨ててから、

 センは、ギに殴り掛かった。


 すさまじい速度の特攻。

 センの猛攻を受けたギは、



「き、貴様……なんだ、その戦闘力……そ、その強さは、どういうことだっ」



「ふはははは! 教えてやろう! 生まれつきだ! 俺は、なんか知らんが、最初から妙に強かった! 不思議だね!」


「き、貴様のどこが、一般人だというんだ!」

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