最終話 念願のハーレムハッピーエンド。


 最終話 念願のハーレムハッピーエンド。


 もう一枚、紙を取り出して、

 センに渡してくる茶柱。


 そこに書かれている文字を見て、センは絶句した。


「……婚姻届受理証明書……っ……え? ぇ、ぇ、ぇ、ちょ、待って……え、これ、なんだかガチくさいんだけど、まさか、本物じゃないよね? 絶対に違うよね? 小ボケの小道具だよね?」


 そこで、黒木が割って入ってきて、


「それ、本物ですよ」


 と、言いながら、


「ちなみに、あと三枚あります」


 黒木、紅院、トコの三人が、

 それぞれ、自分の婚姻届受理証明書を見せつけてくる。


 それぞれ、一枚一枚が、スーパーガチンコの正式書面。

 嘘偽り冗談一切なしのド直球。


 つきつけられた四枚の証明書を目の当たりにしたセンは、

 クラっとして、フラつき、


「いや……ないない。まず、俺、戸籍的には18歳になってないし。あと、法的に重婚とか不可能だし」


「国家緊急権とか、超法規的措置って言葉、ご存じですか?」


「……」


 法とは、一般人を縛るための縄。

 英雄を縛れる鎖など存在しない。


「300人委員会をフルで使えば、この程度のワガママを通すことくらい楽勝です」


「……いや、かもしれんけど……え、マジで……あの、これ、ボケじゃなくて、マジでやってんの?」


「ええ、本当ですよ。今から、役所の夜間窓口にいって確認しますか?」


「……」


「というわけで、これから先、末永くよろしくお願いします。まあ、あなたの話が全て本当だったとした場合、私たちの婚姻生活は、あと数日でしょうけれど」


 などと、淡々とした口調、

 話を前に進めようとする黒木に、

 センは、頭を抱えて、


「い、いやいやいやいや、いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやっっ!! おかしいだろ! ……おかしいよね?! 絶対におかしいよ! イカれている! つか、なに考えてんだ、お前ら?! ほんと、どうかしているぞ! 正気か?! いや、正気じゃねぇよ! もはや、普通に怖ぇよ! 見ろ、この手! 震えているだろ! 可哀そうに!」


「正気をうたがいたくなるのはこちらのほうですね」


 黒木はまっすぐな目で、センを見つめて、


「同じ一週間を1000回……それも、平坦な日々ではなく、地獄のような毎日を、必死になって積み重ねて、あなたは今日にたどり着いた。その結果、あなたは、見事、私たちを守り抜くことに成功した」


 ヨグシャドーの異次元砲に耐えられたのは、

 それを可能とするだけの地獄を積んだから。


 彼女たちが、今も息をしているのは、

 センが、ありえない地獄を積んだから。


「私たちが、今も生きているのは、あなたが必死になって頑張ってくれたから。あなたは頑張ってくれた。ありえないほどに。信じられないほどに。――そのご褒美が『結婚してあげること』などと傲慢なことを言うつもりはありませんが、しかし、私たちの容姿と家柄は、間違いなく世界最高峰。婚姻という契約を結び、私たちの『全て』をささげることは、あなたにとって『利』になると断言できます」


 そう言いながら、

 黒木は、頭を下げて、


「ずっと頑張ってくれて、ありがとうございます。短い間かもしれませんが、せめて、『正式に認められたパートナー』として、尽くさせていただきたく思います」


「……」


 こうして、センは、見事、念願のハーレムエンドを迎えたのであった。


 家族が増えたよ、やったね、センちゃん。

 辛いことはたくさんあったけど、

 終わりよければすべてよし!


 めでたし、めでたし。


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