67話 どこにでもいる普通の高校生。


 67話 どこにでもいる普通の高校生。


「これほどまでの圧倒的実力を見せつけられてしまえば、ツミカさんを『推し』にせざるをえまい!」


「……うん、そうだね」


 しんどそうな顔で、ツミカさんのマシンガンブローを受け流すセン。


 キレッキレのツミカさんを、

 それまで静観していた紅院が、


「ツミカ、ストップ。マジで、ちょっと黙って」


 止めに入り、

 とっ散らかった空気を整理するように、

 センの目を見て、


「展開が色々と急すぎて、さすがに、混乱しているけれど……おかげで、現状がどうなっているか、だいたいの予測はついたわ。今後、私たちでは勝てないGOOが、昼夜関係なく沸いて、あたしたちを殺しにくる。そして、そいつらが、あたしたちの殺害に成功したら、アウターゴッド化して、さらにヤバくなる。そういうことでしょう?」


 と、まっすぐな質問を投げかけてきた。

 センは、


「理解力が高くて助かるね。まあ、『GOOがお前らの殺害に成功した際、アウターゴッドに進化できる』って話がガチかどうかは知らんのだが……とりあえず、今後、お前らが、昼夜問わず、襲われまくるってことは確定だな。というわけで、クティーラが暴れる前にも言ったが、しばらくは、固まって行動してくれ。もう二体、GOOが沸いたら、そいつらもボコボコにした上でゲットして、お前ら各自一人一人に護衛をつけるから。俺の眷属GOOが、最初の数ターンだけでも時間を稼いでくれれば、あとは、俺が瞬間移動でかけつける」


 たんたんと、事務的に、


「同時多発でテロられる可能性もあるから、なるべく、一緒に行動してほしいところだな。バラバラの場所でそれぞれハシャがられるより、まとまっていた方が殲滅しやすい」


 そこまで言ったところで、

 しばらく静観を貫いていた黒木が、


「いい加減教えてほしいのですが、あなたは何者ですか? ちなみに、『どこにでもいる普通の高校生』というサイコなボケを天丼で返すのはスベり散らかすだけなのでやめてください」


「俺が普通の高校生を自称するのは、決して、サイコなボケじゃねぇよ。つぅか、よくみろ。中肉中背黒髪で顔面偏差値48、知性並み、身体能力並み以下、際立った才能なし。どうだ、どっからどうみても、普通だろうが。世間広しと言えど、俺ほど、ラノベの量産型汎用主人公を張れそうな男は、そうそう見つからないぞ」


「目つきが悪い。性根と言動が異常。強さもおかしい。視点もおかしい。情緒も錯綜気味。髪質がゴワゴワ。表情が基本的に暗い。あなたの異常性をあげるのは非常に簡単であり、それらのステータスから鑑みるに、あなたは『普通』ではありません。『普通』を『どう定義するべきか』などという難しい話をする以前の問題。あなたは異常です。あと、あなたの身体能力を並み以下というのは無理があるかと」


 返す刀で、バッサリとセンの主張を切り捨ててから、


「ヘタにごまかそうとせず、正直に言ってほしいのですが? あなたは何者ですか?」


「……」


 センは、三秒だけ黙ってから、


「ただの剣だよ。お前らを守る、鋭利な剣。余計なことは考えず、便利に使っておけばいい」


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