4話 実写は流石に色々と厳しい。


 4話 実写は流石に色々と厳しい。


「つまり、また、異世界に飛ばされる可能性が出てきた……そういうわけか?」


「えっと、まあ、端的に言いますと、そうなりますね」


「……そいつは、また、ずいぶんとファンキーな展開だな。どうやら、あの邪神は、とことん、俺を追い込むつもりのようだ。『ナメんなよ』というところを見せてやりたい。さあ、黒木、張り切って、案内してくれ」


「……いや、さすがに、もうやめておきませんか?」


「腑抜けたことをぬかすな。ここからだ。俺は、ここから輝くんだ。というか、いい加減、ちょっとは輝いておかないと、俺の人気投票がヤバいことになりかねない」


「あなた、アニメか何かのキャラだったんですか?」


「当たり前だろ、俺だぞ。俺の人生が商業作品にならないワケがない。アニメも漫画も小説も映画も実写も舞台も全部網羅しているに決まっているだろう。そして、当然のように、実写はファンから叩かれている。舞台はそこそこ完成度が高いと評判だが、実写だけはどうにも……」


「……そこまで、『自分の人生』で大見得を切るのであれば、実写も大好評ってことにしておきましょうよ」


「あのドラゴ〇ボールですら、実写になると、エグかったからなぁ、さすがに、そこまではなぁ……」


 などと、どうでもいいことを言いつつ、

 センは、念入りにストレッチをして、


「さて……妄想話はそこそこにして、そろそろ奇妙な反応があった場所に案内してくれ」




 ★




 黒木によって案内された場所は、

 第七校舎の裏手。


 センの目には、何の変哲もない場所に見えるが、


 しかし、


 黒木の携帯ドラゴン『アポロ』が、

 目から、ペカーっとサーチライトを照らすと、


「……この『次元の裂け目』……『第二アルファに通じていた裂け目』よりは小さいかな?」


「そうですね……一回り小さいという感じでしょうか」


 と、裂け目に対する感想を軽く口にしてから、

 黒木は、センに視線を向けて、


「……それで? また、私のことをお荷物あつかいして、『ついてくるな』とナメたことをほざいてきますか?」


「俺にも学習能力はある。お前が面倒だってことは、もう十分理解した。だから、ついてくるなとは言わない」


 そう言い切ってから、

 センは、黒木にジト目を向けて、


「ただ、俺だけじゃなく、お前にも学習能力はあると信じたいところだね。思いのほか、すぐに帰ってこられたとはいえ、かなり厄介な目にあったことに変わりはない。俺がお前なら、ここで俺についてくるようなバカな真似はしないが、その辺、どのようのお考えで?」


「とりあえず、一つだけ、あなたの言葉を訂正させてください。『もし、私があなただったら、私以上に頑固な意思を貫いて、意地でも、あなたについていく』と思いますよ」


「……」


 ファントムな小反論すら許さない猛口。

 黒木愛美と口喧嘩で勝てる者は少ない。

 彼女は、小賢しすぎる。


「さて、それじゃあ、行きましょうか。こうなったら、私も意地です。とことん、お付き合いさせていただきますよ」


「……いらないんだよなぁ……」


 心からの言葉を口にしながら、

 しかし、センは、覚悟を決めて、

 次元の穴に飛び込んだ。

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