78話 スリーピース・オッサン。
78話 スリーピース・オッサン。
「アストロギアは陰陽師。バフ・デバフ・追撃・回復と、自由自在なオールラウンダー。サポート役として、とにかく万能。『格上』との闘いでこそ真の力を発揮する後衛タイプ」
そんなアクバートからの評価を受けて、
アストロギアは、軽くバツの悪そうな顔で、
「火力という点では、ちょっと微妙だけどねぇ」
と、切り返すと、
そこで、カンツが、豪快に、
「がはは! 問題ない! ダメージソースはワシとアクバートが担う!」
「十席の中でも、特に役割特化しているのが、われわれ三名。アタッカー最強、タンク最強、サポート最強の三名が、これから、貴様の処理にあたる。もろもろ覚悟してもらおうか」
そんなアクバートの発言に対し、アストロギアが、
「いやいや、サポート役としてはヒッキの方が上でしょ」
「日常生活も含めた『総合的なサポート役』としては、あいつの方が上だと思うが、戦闘のサポート役としては、お前の方が上だと、私は評価している」
「どうかなぁ……私は、戦闘においても、彼の方が上だと思うけどねぇ。彼の支援者としてのポテンシャルは、はかりしれないものがある」
などと会話をしている三名を横目に、
センは、
「バランスのいい理想的なパーティだねぇ。ところで、なんで、自分らの情報を、バンバン、俺にあたえ散らかしてんだ? 今から殺し合いをする相手には、どんな情報であれ、バラしてしまうのは悪手……だと、俺なんかは、普通に考えるんだが、その辺、そちら様としては、どうお考えで?」
「友人の一人もいなさそうな貴様に、私の超スペック家族を自慢したくなった。それだけの話だ。メリット・デメリットなど考えてはいない。単なる感情の問題」
「性根が腐ってんな。俺がまともな感性を持っていたら、今頃、深く傷ついているところだぞ」
などと、中身のない言葉を口にしてから、
センは、武を構える。
「さて……それじゃあ、みせてもらおうか。ゼノリカの天上が誇るスリーピース・オッサンの性能とやらを」
そうして始まった、
『アクバート&カンツ&アストロギア』VS『センエース』の激闘。
センが、オッサンたちに見せつけられたのは、
すさまじいまでに完成された連携。
『それら』は、決して『練習のたまもの』という感じではなかった。
すべての動きが、その場限りの即興セッション。
完璧な反応速度で、たがいの呼吸にハモっていく。
『この三人での連携』の練習をしたことはないのだろうが、
しかし、『他者と連携』して『格上と戦う』、
その手の訓練の跡は、随所に見られた。
すべてが洗練されている。
積み重ねてきたのが分かった。
個々の先天的才能も勿論ズバ抜けているのだろうが、
その莫大なギフトに驕ることなく、
必死になって、地道な努力を積み重ねてきたのが伝わってきた。
だから、センは、
「ゼノリカってのはすげぇなぁ」
純粋な賛美を送った。
嘘偽りない本音。
心の底から、センは、ゼノリカに敬意を表する。
必死に積み重ねてきたであろう、その『覚悟の結晶』に、
はかりしれない『美しさ』を、確かに感じた。
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