42話 サクサク進んでいく予選。


 42話 サクサク進んでいく予選。


 精神的負荷の場合、その場かぎりみたいなところがあるが、

 肉体的負荷の場合、のちのちまで疲労が残り続ける。


 もちろん、極度の精神的負荷の場合、

 『心の傷』と言う形で、肉体損傷よりも厄介な場合も多々あるし、

 内臓に大きな負荷がかかり、動けなくなるというケースも多々あるものの、

 『地獄と向き合うメンタル』があれば、それなりに『無理』が効く。


 ――が、骨格筋や毛細血管の大損傷の場合、『無茶な無理』が、なかなか通せない。


(足が重い……腕があがらねぇ……)


 たびかさなるループによって、

 『戦闘経験値』と『図虚空のステータス』は、

 爆発的に上昇しているが、

 肉体強度は、常に『脆弱』のままキープされている。


 『10キロも走れば足が棒になる』程度の肉体。

 もっといえば、なんで10キロも走れるのか不思議なほど脆弱な身体。


 それが、現時点におけるセンエースのフィジカル。


 心の無茶は、素のメンタルでどうにか出来ても、

 体の無茶は、鍛えた肉体がなければ不可能。


(……俺は……弱すぎる……)


 強制的に50キロ走らされるという経験を経たことで、

 あらためて、シッカリと、自身の脆さを自覚するセン。




「それでは、これより、バトルロワイアル形式で予選を始めます。エントリーナンバー1から30までの方は、武舞台に上がってください」




 当然、運営側が『センの回復』を待つことなどない。

 予選はしゅくしゅくと行われていく。


 エントリーナンバーは、受付順ではなく、

 ランダムで割り当てられており、

 センのナンバーは『17』。


 ようするに、いきなりスタートというわけである。



(30分待ってくれねぇかなぁ……今、ちょっと動くだけでも吐きそうなんだよ……つぅか、いったん、座りてぇ……)



 この要望にも、もちろん、運営側が応えてくれたりはしないわけで、

 かつ、そのことを、センも重々理解しているため、

 センは、棒になっている足を引きずり、武舞台に上がる。



「場外もしくは気絶で失格。制限時間は30分。30分後、武舞台の上に立っていれば二次に進めます。ただし、5人以上が残っていた場合、全員不合格です。それでは……はじめてください!」



 サクサクと進んでいく予選。


 雄叫(おたけ)びがこだまして、

 あちこちで戦闘が開始される。


 30分以内という、なかなか短いタイムリミットがあり、

 かつ、5人以下にまで減らさないといけない、

 という縛りがあるため、様子見をしているヒマはない。


 八方に目を配らせながら、

 とにかく数を減らそうと立ち回る面々。


 バロール杯は、だいぶ格式高い大会なので、参加者は、それなりにランクが高い。

優れた耐久を誇り、立ち回りも秀逸なため、なかなか倒せない。


 ――そのため、『センの相手をしているヒマ』はなかった。


 『どうにか自分が生き残ること』と『とてつもなく強い敵を倒すこと』、

 その二つに意識の全てをもっていかれているので、

 『ゴミの処理』に裂く分の容量は皆無。


(……すげぇ……全員、俺のことを、完膚なきまでにシカトしている……石ころ帽子をかぶっている気分だ……)

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