27話 あなたは、神を信じますか?


 27話 あなたは、神を信じますか?


(図虚空がある状態だと、いくらでも対応できそうだが、素の俺だと、だいぶ厳しいであろうヤツも、それなりにいる……えぐい世界だな……初見殺しの投げ飛ばしで決められなければ終わり……つぅか、そもそも投げ飛ばしが通じるかどうか……)


 などと考えていると、

 ――そこで、



「ちょっとそこのお兄さん」



 ふいに声をかけられて、センは立ち止まる。



「あなたは神を信じますか?」



 などと、宗教一直線の謳(うた)い文句が飛び出したことで、センはすぐさま苦い顔になって、


「今、ここに実体として現れて『願いのひとつ』でも叶えてくれるのであれば信じることもなくはない」


 と言い捨てて、

 センは去ろうとするが、

 しかし、『声をかけてきた主』は、


「お待ちを! 私が欲しかったのは、その一言! 神に対する敬意がまったく感じられないあなたには、優れた資質があると断言できます。我々と一緒に、『神を盲信している悲しい人々』に『真なる教え』を説いていきませんか?」


 あまりに予想外の発言だったため、ついセンは立ち止まり、


「……え? はぁ?」 


 普通の疑問顔を向けてしまう。


 『声をかけてきた主』は、ニコニコ笑顔で、

 ウェルカムを体現するかのように、大きく両手を広げて、


「ともに『神を信じない自由』を広めていきましょう! それこそが、この世界を愛する者としての義務であり、正しい献身なのです!」


「えっと……ちょっと何言ってるか分かんねぇんだけど」


「我々は反聖典組織リフレクション。神よりも遥かに尊い命の王『カドヒト・イッツガイ』を中心に団結する半非営利組織です」


「……半……非営利?」


「我々は『聖典に異議を唱える』という『主目的の行動』で利益を得るつもりは一切ありませんが、組織を運営していくための事業は展開している……そういう団体です」


「……あ……そう……」


 心底興味ない顔をするセン。

 しかし、『リフレクションの彼』は、


「我々は、神によって生かされているのではない! 我々の生活を支えてくれているのは『ゼノリカ』という『組織全体』であり、特定の個人の力によるものではないのです! もし、仮に! 誰か一人、『唯一絶対の指導者』を選ぶとすれば、それは、我々のリーダーであるカドヒト・イッツガイ以外にありえない! もし、『カドヒト・イッツガイこそが神である』と世界が信じるのであれば、私だって、『神によって世界は導かれる』という理念を信じてもかまわない!」


 どこまでも熱く――というか、盲目的に『自身の理念』を叫び続ける。


「さあ、ともに、カドヒト・イッツガイを称えましょう。リラ、リラ、イッツガイ!」


 胸の前で両手を合わせて、

 恍惚の表情で、自身の王を称える様は、

 完全に、宗教系統のソレだった。


(……『既存の宗教を否定する』というコンセプトの新興宗教か……な、なんか、ストレートな宗教よりも、より、エグみと苦味が強い気がする……つぅか、なんだよ、カドヒト・イッツガイって……だっせぇ名前だな……センスのカケラも感じられん)


 ガッツリとドン引きするセン。

 熱量の高い宗教勧誘を受けると、

 たいていの一般人は頭がクラクラしてしまう。

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