69話 飽き飽き。

 69話 飽き飽き。


「どこにドボンポイントがあるか、さっぱりわからない以上……無数の試行回数が必要になる……となると……」


「銀のカギを……大量に入手しておく必要性がありますね」


「そういうことだ……最低でも10本……理想で言えば、1000本ほど欲しい……」


「……もし、仮に、1000本みつかったら……1000回……やり直すつもりですか?」


「当たり前だ」


「……もし、1000回やりなおして……それでも、世界を救う方法を見つけることができなかったら……どうしますか……?」



「その時は……」


 そこで、センは、

 殺人鬼のような瞳で、

 全世界を睨みつけて、




「当たり前のように……1001本目の銀のカギを探してやる……」




 覚悟を口にしたセン。

 その横顔をみながら、

 カズナも、


「……お付き合いさせていただきます……最後の最後まで」


 覚悟を口にした。






 ★




 ――17日の朝、


「……ふぅう……」


 深いタメ息をつきながら、

 センは、ベッドから起き上がる。


 まずは、時間をチェックしてから、窓の外をチェック。

 図虚空が召喚できるかどうかもチェックしてから、

 センは、机の上に置いてある袋を手に取って中を確認する。


「25、26、27、28……よし、全部、あるな」


 前回の六日間で発見した『28本』、

 そのすべてがキチンと引き継げていることを確認すると、


「……リトライチャンスは、無数にある……一週間程度のループは、大して苦じゃねぇ」


 自分に言い聞かせる。

 本当に、すでに、だいぶ苦しいのだが、

 しかし、偽りのカラ元気で自分を鼓舞する。


「何度でもやりなおしてやる……俺が望むハッピーエンドにたどりつくまで……何度でも……何度でもっ」


 そこで、電話がかかってきた。

 もはや確かめるまでもない。



「――今回の初手は、いかがいたしますか?」



「前回と同じだ。まずは、黒木と交渉する」


 そうつぶやきながら、センは、心の中で、


(できれば、黒木との交渉が終わったタイミングにセーブポイントをつくりたいんだが……そういう細かいことができないのが、銀のカギの難点だな……また、同じ説明をしないといけねぇ……クソめんどい……)



 ★



 ――数十分後、

 センが、あらかたの説明を終えたところで、

 黒木は、怪訝そうな顔で、


「……まるで、下手な役者が、前日に暗記したセリフを、そのまま諳(そら)んじているかのような……そんな印象を受ける説明だったのですが、これは私の気のせいでしょうか?」


「気のせいではなく、解釈ミスだな。『全く同じことを2回もさせられて辟易している』というのが正解だ。正直、お前に事の流れを説明するのには、もう飽き飽きしている」


「……2回……」


「俺がタイムリープしたのは、これで3回目だ。よって、お前に、俺の状況を説明したのは、合計3回。前回と前々回では、状況が少し違ったが……前回と今回は、全く同じ……だから、正直、クソしんどい」


「……」


「俺の言葉を疑いたければ、好きなだけ疑え。この『朝の交渉』は、所詮、前フリ。夜になれば、もう、俺の事はうたがえない。大事な話は、そのあとにしよう」


 そう言って、センは席をたった。


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