11話 ナメんじゃねぇ。

 11話 ナメんじゃねぇ。


「……ああ。君が動かなければ、最大10人殺す予定だった。そうなったときのための準備もしてある。――嘘を見抜く魔法など必要ない。君がその気になって調べれば、証拠はすぐに集まるだろう」


「てめぇも『人の親』なら『慰謝料なんかで、ガキの死が癒えるわけねぇ』ってことぐらい想像できるだろ」


「金で痛みを癒そうなどとは考えていない。適切な処理をするだけだ。この世界で『謝罪をする』というのは『金を払う』ということ。それが世界の常識。だから実行する。それだけの淡白な話だ」


「非常にわかりやすい話だな」


「ああ、そのとおりだ。何一つ難しい話ではない」


 そこで、センは、また『重たい一拍』を置いてから、

 正義(まさよし)を睨みつけて、


「前に話した時の感じだと、てめぇは、そういう『愚行』は犯さないタイプだと思っていたんだが……これは、俺の見る目が節穴だったということか? それとも、お前がとんでもない演技派だったということか?」


「組織には『逆らえない流れ』というものがある。それは、『ポジションどうこう』でどうにか出来る話ではない。幹部であれば抗えるかというと、そういう話ではないのだ。もっと言えば、立場が上であればあるほど、この『流れ』というものには歯向かえなくなる。どれだけの金を持っていようと、どれだけの権力を持っていようと、『しょせんは歯車でしかない』という事実にはあらがえない」


「厄介な話だな。ヘドが出る。俺はそういうのが嫌いだ。だから、俺は孤高を目指す」


「力を持つ君がうらやましい。私も出来ることなら――」


「俺は力を持つから孤高なんじゃねぇ。何も持っていない時からずっと孤高だ。ナメんじゃねぇ」


「……そうか。それは失礼した。少し誤解していたよ。根本を誤ってはいないが、細部を誤解した」


「細かい話はどうだっていい。それよりも話を前に進めよう。300人委員会の上位幹部は何人いる? 構成員ではなく、『中心となる人物』は何人いる?」


「8人だな。全員、列強のフィクサーだ。一応、私もその中に入っている」


「じゃあ、残り7人だな。そいつらは、どこにいる? 今、連絡とれるか?」


「全員、ここにいる。300人委員会は、今回の件を、君が想像するよりもはるかに重くとらえている。よって、上位の8名だけではなく、各国で重要な役職を持つ為政者が、50人くらいは集まっているよ」


「ほう……ところで、ここはどこだ? 言うまでもないが、『トイレ』って答えたら殺すぞ。どこのトイレかを聞いている。お前めがけて瞬間移動をしてきただけだから、ここがどこかわからねぇ」


「時空ヶ丘学園の南西にあるホテルの最上階だよ。時空ヶ丘街道を裏山に向かって進んだ右手にある大きなホテルだ」


「ああ……あの無駄にでかいホテルか……あんなホテル、誰が使ってんのかと、いつも不思議に思っていたが、お前らみたいなのが使うんだな」


「いつでも利用してくれ。ここのオーナーは私だ。大統領が相手だろうと、天皇が相手だろうと、必ず金をとるのが私の主義だが……君に限っては、すべてのサービスを無料で提供させてもらう」


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