45話 え、今、何でもするって言った?

 45話 え、今、何でもするって言った?



 重たい沈黙の時間が5秒ほど経過したところで、

 センは、覚悟を決めたような顔になり、

 グっと顎をあげて、茶柱の目を見つめ、




「ヒマだったから、つい、出来心で。――反省はしている」




 などと供述した。


 あまりにもまっすぐに、

 自分の目を見てそう言ったセンに対し、

 茶柱は、


「……」


 一瞬だけ、

 唖然としてから、


「……は、はは……」


 つい、笑ってしまった。


 センが目を覚ますまでは、

 『とことん追求するつもり』だったのだが、

 『覚悟の質が違う目』を向けられたことで、

 戦意が折れてしまった。


「あ、そう……ヒマだったから、つい助けちゃったんだ」


「ああ。それ以上でも、それ以下でもない。それが真実であり、本音であり、現実であり、事実だ」


 あくまでもシラを切り通すセンに、

 茶柱は、


「私も、あんたに倣(なら)って、真実の本音を言っていい?」


「お好きにどうぞ」




「私、あんたのこと、きらぁい」




「……」


「世界一、嫌い。あんたのこと、私は、世界で一番、気色悪い生き物だと思っているわ。あんたと比べたら、まだ、ゴキブリの方がカワイイ」


「異議あり! 対戦相手がゴキブリなら、さすがに、勝てる気がする!」


「何言っているの。バカじゃないの? ゴキブリは飛べるのよ?」


「だからなんだってんだ。てか、飛行ダイブしてくるって点が、ゴキブリの最も忌避されている点だと思うのだが……」


「なんでもいいけど、あたしは、あんたのことが嫌い」


「もういい、わかったから。何度も言うな」


「死ぬほど嫌い」


「わかったって! 言っておくが、ちゃんと傷ついているからな? お前の言葉のナイフは、俺の心を、シッカリとメッタ刺しにしているんだからな?」


「あんたのことは嫌いだけど……ユウキを助けてもらったのは事実だからね。特別中の特別で、何か御礼をしてあげるわ。一つだけ、私に、なんでも命令できる特権をあげる」


「え、今、何でもするって言った?」


「ええ、言ったわ。そして、私がその気になれば、実際のところ、たいていの事が出来る。で? どうする? 何を望む? なんでも叶えてあげるけど」


「マジかぁ……んー……じゃあ……」


 軽くためてから、

 センは、茶柱の目を見つめる。


 そんなセンの目を、

 茶柱も、ジっと見つめた。

 トクンと、心臓が鳴った。

 この上なく『みっともない鼓動』だと、茶柱は思った。

 だから、つい赤くなりかけて、

 けど、鋼の精神力で、自分を制した。


 茶柱罪華は、センの言葉を待った。

 誰かの言葉を真剣に待つのは初めてかもしれない、

 などと、そんな事を想いながら、

 センの言葉を、ただ待った。


 そんな彼女に、

 センは言う。




「明日から、アイテム探索するから。手伝ってくれ」




「……ん?」


 一瞬、何を言われているのかわからなくて、茶柱は普通に聞き返した。

 想定していた答えと、あまりにもかけ離れすぎていて、

 この一瞬、普通に脳がバグった。



「え? なんて? 聞き間違いだと思うから、もう一回、言ってくれない?」


「明日から、アイテム探索するから、手伝ってくれ」

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