56話 サービスタイムは終わったのさ!

 56話 サービスタイムは終わったのさ!


「さて、もう、お喋りは、おなかいっぱいだ。さっさと、かかってこい」


 そう言って、右手でクイクイと手招きするが、しかし、


「「「……」」」


 美少女たちは固まって動けない。


「ん? どうした? 来ないのか? もしかして、私が怖くて体が動かないのか? では、こうしよう。現在、私の体は、戦闘中に自動展開される『ドリームオーラ』という強力な障壁魔法によって守られているのだが、それを解除しよう」


 宣言した瞬間、ウムルを覆っていたオーラが掻き消えた。


「さあ、これで、貴様らのカスみたいな攻撃も、それなりには通るはずだ。ん? まだハンデが足りないって? じゃあ、どうする? 両手足を縛って、かつ、目隠しでもしてやろうか? それでも足りないか? はははっ」


 そこまでふざけたことを言われて、

 さすがにトコもカチンときたのか、


「……クソったれがぁ」


 吐き捨てるようにそうつぶやく。

 それなりの『常識的視点』を有しているトコでも、

 やはり、『最上級お嬢様』として生きてきた時間が長いので、

 結構な『濃度の高いプライド』を有している。


 『もともとの根性』と『強固なプライド』を刺激され、

 トコは、ギギギっと、夜に響き渡るくらい、

 大きな音の歯ぎしりをしてから、


「ほんま、とことんナメとるなぁ! しゃーないとはいえ……普通に腹が立つ! あんたがスゴいんは分かったけど、だからって、全部を諦めきれるほど、こちとら、世界に対して未練がないワケやないんじゃい!!」


 腹の底から声を出し、


「あんたの100分の1以下でしかないとはいえ、こっちも、これまで、必死こいて命を積んできたんじゃ! せめて、かすり傷の一つや二つくらいはつけてから死んだる! 全身全霊、命も世界も全部を賭けて、あたしをナメた代償は大きいって事を教えたるわ! ……ミレーがなぁ!」


「トコさん……キメ顔中に失礼しますが、他力本願極まりない今のセリフ、とてつもなくカッコ悪いです」


「ええねん、別に! ミレー、ほんま、頼んだで!」


 トコの言葉にうなずいた直後、

 紅院は、腹の底から、




「火霊ドライブ起動! 右腕リミッター解除! クリムゾンスラッシャー接続!!」




 宣言すると、紅院の存在値が大幅に上昇する。

 全身を包み込むローズレッドにワインレッドを垂らしたようなオーラ。

 特に、右手が、燃え上がるようなエネルギーを捻出している。


 ガチャガチャっと音をたてて、

 右腕に接続された『炎鬼の魔力を放つ巨大な剣』が唸りをあげる。


 刃の部分はチェーンソーで、

 刀身の背面に七つのバーニアがついている凶悪な形状のエンジンブレイド。



「リミッターを解除してしまったから、一撃が限界! 初手に全てをかけるわ。総員、全力で援護して! あいつを殺す!!」


 殺せるとは思っていない!

 しかし、気概を叫ばずにはいられなかった!

 それだけ!


 ――特攻をしかけてきた彼女の姿を見て、ロイガーは、


「おっと……変身だけではなく、『存在値増幅装置(ドライブ)』まで使えたのか。さすがに、それは、ちょっとしんどいな。――我が身を守れ、ドリームオーラ!!」



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