35話 虚弱ボーイ『センエース』の大冒険。

 35話 虚弱ボーイ『センエース』の大冒険。


「罪華さん、私は、意味がある言葉しか口にしていません。ハリボテな横文字の誤用や、中身のない哲学用語の乱用など、ただの一度もしたコトがないです。そもそも――」


「マナミ。ツミカは、ガチ批判してるんやなくて、いつもどおり、ポップにボケただけやから。そんなガチでキレんなや」


 シッカリとした怒りマークを浮かべる黒木と、

 ヘラヘラが止まらない茶柱。

 そんな二人の間に入るトコ。


 ピリっとした空気を切り替えようと、

 トコは、


「と、ところで、ツミカ。あんたが仕事でミスるとは思ってへんから、『儀式をしとった奉仕種族の殲滅』に関する『結果報告』は必要ないんやけど……なんで、グールの頭を持ってきたんかだけは教えてくれるか?」


「ほえ? ……ぁ、引きちぎった時のままだったにゃぁ」


 どうやら『トコに指摘されたコト』で、はじめて、

 自分がグールの頭を掴んでいる事に気付いたらしく、

 罪華は、ポイっとグールの頭をその辺に捨てた。


 その一連を受け止めたトコは、

 心底からの渋い顔で、


「ぁ、相変わらずのキ○ガイぶりやなぁ。震えが止まらへんわ」


 と、そこで、紅院が、


「ツミカ。一応、聞いておくわ。何の問題もなかった?」


 そう尋ねると、

 茶柱は、ニタァっと悪い笑顔を浮かべて、


「問題がないと言えばウソになるにゃぁ」


 などと含みの爆弾を投下する。

 が、その発言に対し、

 トコは、わずかも動揺をみせず、


「……まさかとは思うけど、『働いたから腹へった。それが問題や』とかクソベタなこと言わんやろうなぁ」


「……とこてぃん、ツミカさんのセリフを先に言わないでほしいにゃぁ」


 口をとがらせる茶柱と、

 しんどそうな顔でため息をつくトコ。


 両者それぞれに目線をくばってから、

 紅院は、


「何の問題もないようね。よし、今夜の仕事は完了よ。グールの臭い血で汚れちゃったことだし、シャワーでも浴びて帰りましょう」






 ★






 ――夜の学校に忍び込んだセンが、

 違和感の正体を見つけようとウロウロしていると、

 そこで、


「……おいおい、マジかよ……」


 前方に、動く物体を見つけて、

 注視してみると、

 それは、『奇妙な化け物』だった。


 二本足で立つ『酸で溶けた犬』のゾンビのような化け物。


「奇形の犬……じゃねぇよな……いや、仮に、そうだったとしても、それはそれで大問題の大事件だが……」


 などとつぶやいていると、

 その化け物は、センの方に、

 ギロっと視線を向けて、

 3秒ほどセンの全身を観察してから、


「かかか……ひどいな、貴様」


 と、そんなことを口にした。


「キェェアァァァ、シャベッタァア」


 と、センが、テンプレな叫び声を上げる。

 しかし、そんなことはお構いなしに、


「人間が『脆弱な種』であることは重々理解しているが……しかし、その中でも、貴様は、とびぬけて酷い……ここまでスカスカな肉体を見たのは初めてだ。貴様の生命レベルは、生まれたばかりの赤ん坊と比べても大差ない」


 と、そんな総評を受けたセンは、

 ムっとした顔で、


「いや……あのなぁ。俺は確かに、運動不足の虚弱ボーイだが、しかし、さすがに、赤ん坊と大差ないってこたぁねぇだろ。俺、さっきも、10キロくらい走ったんだぜ? 赤子に10キロマラソンなんてクールなアクティビティがかませるか? あん?」


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