28話 あ、私、宗教は結構なんで……

 28話 あ、私、宗教は結構なんで……


(……なんだ、これ……この『イヤな予感』はなんだ……)


 妙な胸騒ぎがして、

 変に心臓がしめつけられる。


(何かが起こる……たぶん……わからんけど……なんか、『すげぇダルいこと』が巻き起こる気がしてならねぇ)


 別に、ハッキリとした『質量のある前兆』を感じているわけではない。

 なぜか、心がザワザワとしている。

 結局のところは、それだけの話。


 ただ、決して錯覚ではない。


 その奇妙なザワザワは、

 時間が経つにつれて、

 どんどん強くなっていく。


「なんだよ、この感覚……キモいなぁ……」


 などとつぶやきながら、

 センは、重たい体をたたき起こして、

 違和感の正体を突き止めようと歩き出す。


 『どうすれば解消できるのか』がサッパリわからないので、

 闇雲に歩き回ることしかできなかったが、

 しかし、そんな中で、


「……」


 気づけば、自然と、

 センの足は、『学校』に向かっていた。


 現在地は、学校から200メートルも離れていない。


 目的のないランニングは、

 いつしか、無意識のうちに、

 通いなれた道をたどっていたのだ。


 少し長い河川敷の階段を上がり、

 センが通っている高校、

 ――『時空ヶ丘学園』が視野に入ったところで、


「……あぁ?」


 センは違和感の正体を知る。

 学校から、妙なオーラが放出されている……気がする。


「なんだ……あれ……湯気?」


 手で、ごしごしと、目をぬぐうセン。


 改めて見てみるが、やはり、何かがおかしい。


 『電気の明かり』ではない、

 何か奇妙な、青白いモヤモヤが、

 学校全体から放出されている……ような気がする。


 確信には至らない。

 『目の不調である可能性』も捨てきれない程度の、微妙な違和感。


「やべぇな……もしかして、俺の目、バグった?」


 不安になっていると、

 そこで、

 帰宅中のサラリーマンが横を通り過ぎていった。


 センは、つい、


「あの、すんません」


 そのサラリーマンに声をかけた。


 急に背後から話しかけられた中年男性は、

 怪訝な顔で、


「……はい?」


 と、じゃっかん距離を取りながら首をすくめる。


「あの、えぇと……あの学校、どう思います?」


「……はぁ?」


 そこで、チラっと、学校に視線を送るサラリーマン。

 特に何も異変は感じていない様子で、

 だから、当然、また、


「……どうって何が?」


 と、首をかしげる。


「いや、だから、あの……なんか、オーラ的なのが出てません? こう、なんか『悪い感じの気』みたいなのが、モヤモヤと……」


 そんなセンの『電波力最高潮の発言』を受けて、

 サラリーマンは、露骨に顔をゆがめ、


「……あ、私、宗教は結構なんで……」


 そう言うと、

 彼は、そそくさと過ぎ去っていった。


 その露骨な態度を受けて、

 センは、


「いや、俺も、できれば、宗教とは距離を置きたいタイプなんだよ……」


 などと、どうでもいいグチをこぼしてから、

 あらためて、学校に視線を向ける。


「……どうすっかなぁ……」


 変なオーラを出している学校。

 センが、先ほどから感じている妙なザワザワの震源地は、


「……んー」


 おそらく、あの学校。


「イヤな予感しかしないけど、このまま帰るのもなぁ……」


 ザワザワが止まらない胸をかきむしる。

 このまま帰っても、おそらく、気になって眠れない。

 ゆえに、


「……んー……まー、んー……と、とりあえず……いったん、ちょっとだけ……覗いてみようか……」


 そうつぶやいてから、

 センは、妙な気配を感じる『夜の学校』へと足を踏み入れた。



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