21話 強情なセンエース。

 21話 強情なセンエース。


「あんたは、俺にとって大事な人間じゃないから、俺は、あんたの感情よりも、自分の欲望を優先したい。だから……悪いな」


「そうか、まあ、だろうな。立場が逆だったとしたら、おそらく、俺も、同じ結論にいたっただろうから」


 などと、本音を吐露してから、


「……じゃあ、悪いが、力ずくでいかせてもらう。お前に怨みはないし、人間的に嫌いではないが……お前は俺にとって大事な人間ではない。だから、俺も、俺の欲望に従わせてもらう。両足両腕を骨折してしまえば、休まざるをえないだろう」


「……そんなことしたら、普通に傷害で捕まると思うんだが?」


「覚悟はしてきた」


「……うわ、マジな目だな」


 センは、普通に呆れて、


「警察の厄介になんかなったら、あんたの家名にキズがつくだろ。となれば、結果的に、ボスである紅院家にも迷惑がかかるんじゃ?」


「心配無用。俺一人が勘当されて終わりだよ。大した問題じゃない。デカい家には、デカい家なりのケジメの付け方ってのがある。名家にも、クズが生まれる可能性はある。その確率からは逃れられねぇ。だったら、『どうしようもないことに悲観する』よりも『処理方法を考える』方が建設的」


 優秀な血と血を掛け合わせても、

 『サイコパス』が生まれることはありえる。


 そんな、『当たり前の可能性』によって、

 『家名が傷つけられること』を無意味に恐れるよりも、

 『勘当のマニュアル化』を徹底した方が合理的。


「つまりは、マニュアル通りに、俺の存在が消されて終了。ぶっちゃけ、別に、それでもいい。いや、むしろ『そっちの方が色々と楽になれる』とすら思うな」


「……」


「最後の警告だ。当日は休め。それだけでいいんだ。簡単だろ?」



「だな……すげぇ簡単だ。逆に、俺は、なんで、こんなに抵抗しようとしてんのか、マジでわからなくて草も生えない」



 そんなことをつぶやいてから、


「……別に、遠足に一緒にいったからって、何がどうなるってワケでもねぇのに……」


 ブツブツと、


「……ほんともう……なんつーか……」


 色々と、考えたすえ、

 センは、



「確率的に、来年はほぼ確定で、違うクラスになる……ウチの学校は、バカみたいに、生徒の数が多いからな……」



 自分の考えを、丁寧に並べていく。



「今後、一年間の間で起こるイベントの中で、あいつらと、何かができることってのは……おそらく、もうない……」


「ああ、だろうな。今回で最後だろう」


「バカバカしいと思っているよ。自分でも……けど……」


 そこで、センは、佐田倉の目をジっと見つめ、


「ここで引いたら、なんか、すげぇ後悔するような気がするから、だから……悪いな」


「……そうか」


 一言だけ、そうつぶやいてから、

 佐田倉は、

 パァンと、両手で、『自分の両頬』を叩いて、


「さて、それじゃあ、家を捨てようか。オヤジ、オフクロ悪いな……俺は、あんたらの自慢にはなれなかった」


 そう言いながら、

 佐田倉は、センに掴みかかった。


 ものすごい力と速度で、

 センの両手両足を折ろうと、

 襲い掛かってくる。

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