51話 欲しいものがあったから。

 51話 欲しいものがあったから。


 セリフにオプションを背負わせて、

 今、美しく、咲き誇る閃光。


 解放されたセンの神気が、世界を暖かく包み込む。


 神の最果て。

 輝きの頂点。


 命の王がたどり着いた、

 この上なく尊き姿。


 ――そんな『神の最果て』を目の当たりにして、

 オメガは、


「さほど時間は経っていないはずなのに、P型センキーに殺されかけた時よりも、はるかに強くなっているな。今のお前なら、ルナがなくとも、『イタズラな領域外の牢獄』をブチ破るくらいのことはできそうだ」


「……どうだろうな。そうなりたいと思いながら訓練を積んできたが」


「たった数日で……過剰なほど強くなるな、お前は」


「この世界にきてから遊んでいたワケじゃないし、そもそも、事前に積んできた下地がシッカリとしているからな」


 そう言いながら、

 センはゆっくりと目を開けて、

 自分の状態をチェックしつつ、


「膨れ上がった力を受け止めるだけの器を磨いてきた。決して折れることなく、今日という日まで、自分の足で歩いてきた」


「そうだ、センエース。お前は、『覚醒した』から『強い』んじゃない。『覚醒できるくらい強くなった』から『多くの絶望を乗り越えること』ができた」


 ありえない話だが、

 仮に、『下地のない者』が、

 運だけで、『究極超神化7』に覚醒したらどうなるか。


 膨れ上がった力の暴走を制御しきれず、

 パーンと、爆発して終わり。


 『神化』までならば、『コスモゾーンの法則』の、

 『正式な管理下』に置かれるため、

 運だけで覚醒しても死ぬことはないが、


 ――『究極超神化』は話が別。


「センエース、お前は強い。『なぜ、そこまで』と『真剣な疑念』を抱かざるを得ないほど、お前の魂は強すぎる」


 そう前を置いてから、


「一つだけ聞かせてくれ、センエース。お前は、どうして、そこまで自分を強く律することが出来る?」


 オメガの質問に対し、

 センは少しだけ迷う。


 『答え』は決まっているのだが、

 『答え方』に悩む。


「それは、たぶん……」


 ジックリと、考えてから、

 センは言う。


「欲しいモノがあったから」


「欲しいものねぇ……ちなみに、それは、なんだ?」


 オメガの質問に対し、

 センは、もう迷わなかった。

 まっすぐに前を見る。



「決まってんだろ?」



 そこで、センは、ニっと、

 太陽のように微笑んで、

 右手の人差し指で天を、左手の人差し指で地を指しながら、




「かわいい女子の前で、とことんカッコつけられる度胸だよ」




 ビシっと、そう言い切った。


 普通に受け止めれば、

 この上なくダサい発言だが、

 しかし、


「……なるほど……」


 オメガは、至極マジメな顔で、

 強く頷きながら、


「だったら、折れるわけにはいかないよな」


「そういうこと」


 などと、

 終始フワフワした会話をしながら、

 両者は、ゆったりとした歩みで、

 『手を伸ばせば触れられる距離』まで近づく。


 その場で、数秒だけ、にらみ合ってから、


「俺からいくぞ」


 オメガが最初に、右の拳をギュっと握りしめ、

 魔力とオーラを、これでもかと込めてから、

 センの顔面(左頬)に、ガツンとたたきつける。

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