34話 龍試委員会。

 34話 龍試委員会。


(近い将来、確実に戦争が起こる……仮に、相手が和平を望んだとしても、エリアAは共存なんて認めないから)


 エリアAは、絶対の王者であることを望む。

 ゆえに、


(――大事なことは、『どちらにつくか』を、可能な限り早期に見極めること。その判断が遅れれば遅れるほど不利益を被る)



 ――などと、ルルが考えている間に、

 四人の闘いは、

 泥仕合の様相を呈していた。


 傍目には拮抗している風に見えて、

 実のところ、的確に、

 ロコとゲンの両者だけが、ジワジワと削られていく。


 それを見たルルは、

 平坦な表情で、


(これ以上は時間の無駄ね……あとは、ロコとゲンが詰められるだけ)


 まだまだ、四人とも体力は残っている様子だが、

 しかし、ルルは、

 パンパンと、手をたたきながら、


「その辺にしておきましょうか。これ以上は、あまりに退屈で見ていられないわ」


 試験終了の合図を出した。


 その発言に対し、

 ゲンは、かみつくような勢いで、


「まだ、勝機はあります! 切り札はまだある!」


 そんなゲンの発言に対し、

 ルルは、心底どうでもよさそうに、


「そう、よかったわね」


 と、一ミリも聞いていない感じで、バッサリ切り捨てて、


「結果を言い渡すわ。そちらの受験生二人は保留合格。ロコとゲンは、退学。以上よ」


 その発言に対し、

 最初に、くってかかったのはIR3。


「保留……とは、どういうことですか?」


「100%、言葉通りの意味よ」


「納得がいきません。闘いが長引いたのは事実ですが、しかし、私たちは、確実に勝てた。試験官ゲン・フォースは『切り札を残している』と言っていましたが、それはこちらも同じこと」


「なら、さっさと切り札を切っておくべきだったわね」


「……」


「この学園においては、私の意思がルール。私の決定が絶対。それが気に食わないというのなら、残念ながら、ウチではやっていけないわね。保留合格と言ったのは取り消して、正式に不合格を言いわたすから、さっさとお家(うち)にかえりなさい」


 その言葉を受けて、

 アモンが、渋い顔で、


「どうすれば、正式に合格だと認めていただけるのですか?」


 と、冷静な質問を投げかけた。


 その発言に対し、

 ルルは、ニコっと微笑んで、


「そうね……どうしようかしら……うーん……」


 などと『悩んでいるフリ』を軽く一発カマしてから、


「最近、『龍試委員会』の人手が足りないから、そこで、シッカリと働いてもらおうかしら」


「龍試委員会……それは、何をする委員会ですか?」


 事前調査にも限界はある。

 さすがに、そこまで細かいことまでは手が回っていない。

 というか、事前に調査したのは、

 五大家に関することくらい。


「全宮学園で最も厳しい試験である『龍試』を実施するときに、担当教員の手伝いをしてもらうわ。『試験場所のロケハン』であったり、『資料の作成』であったり、『外部の人間に協力を要請する際の連絡係』だったり、やることはたくさんあるわ」


「……ようするに、教員のパシリをしろ、と」


「そのとおり」


 ニコっと微笑んでから、

 ルルは、


「龍試委員のメンバーとして、しばらく、学園に貢献してくれたら、その時は、あなたたちの合格を正式に認めるわ」

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