44話 真に完璧な英雄を待ちながら。

 44話 真に完璧な英雄を待ちながら。


「――メギドグリムアーツ・セイバーゼノリカレント!!」


 超次元のグリムアーツで、

 ナイアに削りを入れていくセイバーリッチ。

 覚悟と憤怒と執念が込められた美しき一手。


 ズンと、重たく、

 グンと、伸びやかに、


 セイバーリッチの拳が、

 ナイアの魂魄に揺さぶりをかける。




(――めちゃくちゃ成長してんなぁ……)




 セイバーリッチの豊穣(ほうじょう)を、

 ナイアは嬉しそうな目で見つめていた。


(やはり『残して』おいてよかった……)


 心の中でそうつぶやくと、

 ナイアは、


「――だが、まだまだ足りてねぇ。俺には届かねぇ。それじゃダメだ。それじゃ、何も救えねぇ」


 両手に膨大なオーラをブチ込んでいき、


「……『想い』だけで救える世界は、少年誌の中にしか存在しねぇ! 狂おしいほどの暴力(エネルギー)がなけりゃ、この世で最も醜い『口だけの虚勢』で終わる! お前の根源はどっちだ?! 本物の覚悟か! 薄っぺらな虚勢か!!」


「どちらかといえば後者だね♪ ぼくちゃんは、いつだって、口先だけのハンパ者♪ ファントムトークでお茶を濁すことしか出来ない愚かなサイコパスさ♪」


 そう前を置いてから、

 しかし、


「……けれど……」


 『覚悟が足りない表情』の『対極』と断言できる、

 『ビリビリとした熱意のほとばしる顔つき』で、


「……それでも叫び続けると誓った想いを……死ぬほど焦がれた憧憬を、絶対にあきらめないと喚(わめ)いた執念を……」


 ギリギリと、奥歯をかみしめる。



「痛みも、苦しみも、弱さもぉおおお!! 全部、全部、全部ぅうう! まるごとぉおお! あつめてぇぇぇっ!!」



 電流を纏い弾ける。

 荘厳な、命の叫び。

 大きな光が収束していく。

 散り散りになった想いの結晶。


 それが寄り集まって、

 またたいて、

 セイバーリッチの右腕に寄り添うように、

 大きな一つとなる。



「顕現せよ!! リミットブレイクウェポン、パーフェクト・トゥルーヒーローォオオオッッ!!!」



 キュィイインッッ!

 と、叫びに呼応する駆動音が世界に響く。

 その直後――

 ガチャガチャガチャッッ!!

 と、音をたてて、想いの結晶が具現化されていく。

 現れたのは『命の希望』を模したような巨大な銃。


「最恐の死神にして、最高のヒーローでもある『ぼくちゃん』の全部で……華麗な終焉を飾ってあげる♪」


 体の5倍はある超巨大な大口径のビームライフル。

 地面に固定されているがレティクルは自由。



 音声入力式超高威力ライフル。

 使用すると全身のシステムが長時間オーバーヒートしてしまうというデメリットがあるものの、威力は間違いなく最高の究極兵器リミットブレイクウェポン。


 フルパレードゼタキャノンを、

 さらに『使いにくく』したような、クソピーキー兵器であり、

 それゆえに、火力だけはフルパレードゼタキャノンを超えている。



 ――それを見たナイアは、


「最恐や最高だけじゃ届かない世界を教えてやるぜ」


 両手に、オーラと魔力を結集させていく。


「てめぇの、その『ラリった闇』すら飲み込む『無秩序な混沌』。その無様な姿を、その目にやきつけろ」


「無様な姿なら見飽きたさ♪ ぼくちゃんが見たいものは、その先にしかないんだよねっ♪」


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