37話 無数の聖なる死。

 37話 無数の聖なる死。


「か、神の慈悲!!」


 ナイアは、慌てて回復魔法を使うが、


「……ぜ、全快しねぇっ……神の慈悲ですら再生不能な闇……ぐっ……」


 『最大HP』にダメージを与える系統の攻撃。

 別段珍しくもないが、『神の慈悲』ですらリカバリー不可能となれば話は別。


 どうにか、あの手この手で最大HPまで回復させよぅとしていると、

 そこで、


「まさか、さっきでの終わりだと思ってるのかなぁ? ノンノン、そんなわけもなし♪ むしろ、ぼくちゃんのオンステージはここからはじまるのさ♪」


 魔力を高めて、情け容赦なく、


「――『フォーエバー・フォース・ブリザード』――」


 極大魔法を発動。

 色々な意味で『モリモリのアリア・ギアス』が込められたその魔法は、

 しっかりと、ナイアの魂魄にまで届く。


「ちぃ……っっ……紅兎(こうと)・斂葬魔炎(れんそうまえん)ランク3000っ!」


 完全に凍らされる前に、自身に対して魔法を放つことで、どうにか抵抗したものの、


「……ぅ……」


 即死回避した際に発動する『意識障害』がナイアを襲う。

 『フォーエバー・フォース・ブリザード』は、

 ネーミングだけ見れば完全にネタ魔法だが、

 実際のところ、性能の方は、かなり破格。


 ほぼ確実に即死を通し、

 通せなかった場合は、

 確定で、何らかの状態異常を付与する害悪魔法。


「うううっ! ちぃ!」


 精神力だけで、どうにか意識障害にもレジストしてみせたが、

 完全無効にしてみせたワケではないので、明確なスキが生じてしまう。


 そういう細かいスキをどれだけ見逃さずに寄せていけるか、

 それが高次戦闘における基本的なセオリー。


「抵抗が一手遅いねぇ♪ ノンキかっ!」


 セイバーリッチの猛攻はとどまることを知らず、

 その後も『厨二属性』の魔法をバンバン放ってくる。


 膨大な魔力。

 人外の精神力。


 そのあまりの圧力に、

 さすがのナイアも、


「――がぁあああああああああああ!!」


 押し込まれる。

 歪で特異的な空間系の魔法を連射され、

 いくつもの檻に閉じ込められて、

 超高次の圧縮を受け、

 その流れのまま、



「――『ダイアグラム・セイバーゲート・デスワールド』――」



 セイバーリッチは、

 無数に用意してきた『切り札』の中でも、

 結構な『とびっきり』を投入。


 膨大な魔力とオーラと神気を必要とする、

 圧倒的な超上位グリムアーツ。


 『聖なる死』という、

 ぶっちゃけ、ちょっと何を言っているのかわからない『奇妙な概念』を、


 きわめてリアルな『凶悪に殺傷力に高い特質的エネルギー』へと変換する異質な技。


 極大の領域魔法と、固有スペシャルと、積み重ねてきた体技。

 その全ての複合技。


「――はは、死んじゃえ♪」


 星の数ほどになった、無数の『聖なる死』が、

 ナイアの全てを包み込む。


 いまだ、『何を言っているのかわからない概念』だが、

 それでも、現実として、

 『聖なる死』は、ナイアを圧殺しようと襲い掛かる。




「だぁぁあぁぁぁああああああああああああああああっっっ!!」




 膨大な存在値を誇るナイアでも、

 セイバーリッチの覚悟を前にすれば、

 さすがに無傷ではいられない。

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