確信という願望。

 確信という願望。


(ここまでに集めた情報を組み立ててみると……おそらく、ロコの目標は……『革命』……それも、部分的な変革ではなく、この世界の支配構造を丸ごとぶっ壊すような、超大規模革命……)


 言動や思想を冷静かつ真剣に考察してみると、

 『その答えにしかたどり着けないヒント』が、あまりにもありすぎた。


 ほとんど『宣言』――いや『宣戦布告』にすら思える狂気の散乱。

 だが、最後のところで、『やり切ってはいない』というところに、

 『時期をうかがっている』という虎視眈々な狡猾さが垣間見えて、

 そこからも、『冗談』ではなく、『本気』だということがうかがえる。


(もしかしたら、五大家に属する人間を『残らず皆殺し』……ぐらいのことは考えているかもしれない)


 もちろん、全宮ロコと腹を割って話しをしない限り、

 『具体的にどこまでのことを目標としているか』は不明なままだが、

 しかし、


(どこを最終地点にしているかはわからない……けど、あの女は『自身が目標としている場所にたどり着く』まで絶対に止まらない。『想定していたミッションの半分はクリアできたからもういいや』とか『ここまできたら後は講和で進めていく』……みたいな妥協は一切ない。あの女は……最後の最後まで、とことんやる。そういう目をしていた)


 ロコとは一度会っただけ。

 まともな会話も出来てはいない。

 だから、実際のところは何ひとつ理解できていない。

 理解などできるわけがない。


 ――しかし、わかる。

 ゲンにはわかる。


(あの女は狂人だ……俺と同じ……壊れた変態……)


 全て、推察にすぎない。

 確たる証拠などはない。

 あくまでも、すべて、ゲンが『そう感じた』という感覚の話でしかない。


 だが、ゲンには『その感覚』が『ズレてはいない』という確信があった。


(全宮ロコには味方が必要だ。『彼女の思想を邪魔する全てを排除できるぐらいの強い剣』がなければ……全宮ロコは、必ず、どこかでつぶされる)


 ここに関しても確信があった。

 全宮ロコの革命は、

 彼女一人だと、絶対に完遂できない。


 ――ここに関しては、確信というより『そうであってくれなければ困る』という願望に近い妄信なのだが、ゲンの無意識下の中では、やはりどうしても『確信』でしかないのだ。


 全宮ロコが、一人で全てを成すことが可能な完全なる超人で会った場合、

 ゲンは、『自分の居場所』を見失ってしまう。

 それは、ゲンにとって、決してあってはならないこと。

 だからこそ、ゲンは、自分が望む答えに引っ張られる形で、

 最終的な結論を導き出した。




(全宮ロコの革命に必要な剣に……俺はなる)




 ――仮の話をしよう。

 仮に、

 ゲンに対して、

 『なぜ、そこまでかたくなに全宮ロコの革命に手を貸そうとする?』

 と尋ねれば、

 ゲンは、迷わずにこう言うだろう。


『それは、アレだ。アレのアレ力がアレでソレだからだよ。言わなくてもわかるだろ?』と。


 ゲンは間違いなく、全宮ロコに一目ぼれした。

 しかし、おどろくべきことに、

 ゲンは、自分がロコに一目ぼれしたということに、


 ――気づいていない。



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