ギルティブラッド。

ギルティブラッド。


「ところで、オキはどこにいる? あいつとも顔合わせをさせておきたいんだが」


「道場で剣を振っているよ。いつも通り『何かがつかめそうな気がする』……とか、なんとか言いながらな」


 その言葉を最後に、

 ヒジカは、ソウルさんに背を向けて、自分のデスクへと戻っていった。


 ソウルさんは、ヒジカに軽く礼を言いつつ、

 エレベーターに乗り込んだ。


 ――道場は地下一階に設置されている。

 チーンと音が鳴り、

 少し進むと、

 厳かな道場が広がっており、

 その中央に、

 端正な顔立ちをした男が、剣を構えていた。


 ゆったりと、

 丁寧に、

 剣を振り上げると、

 まっすぐに振り下ろす。


 シッッっと、空気を裂く音が道場中に響く。


 その背中に、

 ソウルさんが、


「……何かつかめたか、オキ」


 そう声をかけると、

 オキは、柔らかく微笑んで、


「いえ……今日こそは何かつかめるかと思ったのですが……何一つ」


「そうか……まあ、しかし、焦るな。お前は天才だ。いずれ、必ず、剣の真髄に届くだろう」


「だったらいいのですが」


 にこやかに微笑みながらそう返事をするオキに、

 ソウルさんは、続けて、


「まあ、しかし……この子の方が先にたどり着くだろうがな。なんせ、ウチの子は天才だから」


「……そちらの少年は、局長のお子さんでしたか。なぜ、ここに?」


「お前とヒジカに鍛えてもらいたくて連れてきた。あと、ついでに、私が働いている背中を見せて尊敬させたくてな」


「……ははっ、壮大な計画ですね」


 そう言って、オキがニコっと微笑んだ、その時、


 ――ソウルさんのスマホが鳴った。

 一秒と待たせずに、


「私だ」


 サっと出る。

 その時の表情は、今までゲンが見たことのない局長としての顔だった。


「ああ……わかった……すぐに出る」


「どうしました?」


「ギルティブラッドが動いた」


 そこで、ゲンの耳がピクっと動いた。

 ギルティブラッドの名前は知っている。

 WEB小説でもたまに登場していたテロ組織の名前。


 シロアリやゴキとは趣が異なり、

 理由も思想も持たない『完全に頭がおかしい連中』の集まり。


 『世界をビックリさせてやる』がモットーという、

 イカレ方にエッジがきいている変態ども。


 モットーはあっても確立された目的は持たないキ〇ガイの集団。

 崇高な理念など皆無で、だから、基本的に、組織としては成り立っていない。

 ※ ギルティブラッドは『組織』というより『そういう種族』と捉えた方が正確。

   『ギルティブラッド=精神異常者』と考えると理解しやすい。


 世界に対していやがらせが出来れば、それで十分と考える害悪の権化。

 シロアリやゴキのように『利』を求めている組織ではなく、

 『ゆがんだ我』の『発散』だけを求める狂人集団。


 つまりは、純粋無垢なテロリストども。


 その手の『制御できないサイコパス』は、どの時代、どの世界にも必ず存在し、

 かつ、いくら叩き潰しても、必ず、一定数は湧いてくる。


 これまで散々言ってきた通り、

 ゴキやシロアリの実質的なボスは『五大家』。

 だが、ギルティブラッドは、五大家の支配から外れている真の野犬。



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