ゼノリカの天下、楽連の武士。督脈(とくみゃく)の15番。

ゼノリカの天下、楽連の武士。督脈(とくみゃく)の15番。



「俺が納得するまで、対価は払い続けてもらう。裏の組織に手を出すという事の意味を、骨の髄まで叩き込む。――さて、ここまでで、何か言いたい事はあるかい?」


「ふふ」


「どうした? 恐怖でおかしくなったか? 最初にちゃんと言っておくが、いまさら後悔しても遅いからな。お前らはシロアリに手を出したんだ。タダですむわけがな――」



「――ドナドナ――」



 ドナは、ゴミスの話を最後まで聞くことなく、


「――なっ――」


 空間魔法を使って、ゴミスを自分が生成した空間に閉じ込める。


 体育館サイズの空間に閉じ込められたゴミスは、


(っ……空間魔法か……)


 冷静に、周囲を観察する。

 急な魔法をくらったからといって、みっともなくオタオタするほど坊やじゃない。

 極限状態の時ほどクールに。

 裏側で生きる者の鉄則。


(特に凝った仕掛けはないみたいだな……ただの白い空間……)


 ゴミスの見立て通り、ここは、特に仕掛けのない真っ白な空間。


(ふん……安いな。これで閉じ込めたつもりか? ぬるい、ぬるい。すぐに破壊して脱出――)


 と、考えていると、

 ゴミスの目の前に、

 『10歳くらいの少年』が出現した。

 身長は120センチくらいで、体重は30キロ前後。

 体格に見合った幼い顔つき。

 見た目は、間違いなく子供。



(……ガキ? どういう……)



 ひどく生意気そうな顔をしている、気位(きぐらい)の高そうな少年だった。

 ネコ科系の釣り目で、口元は常時ニタついている。


 わかる。

 言葉をかわさなくとも、

 『ナメられている』と、ハッキリと理解できる。

 そんな態度。


「……クソガキ。なに笑ってやがる」


「ああ、ごめん、ごめん。ハンパなヤツを見ると、ついクセで見下しちゃうんだ。パメラノ先生からは『そのクセを直せ』って散々言われたんだけど……ほら、どれだけ努力しても潜在的本質は変わらないって、よく言うじゃん? だから、ダメだなぁとは思っているんだけど、どうしても出ちゃうんだよねぇ。ただ、今回の場合、そっちにも責任の一端はあるんだぜ? あんたがもっと出来るっぽいヤツだったら、僕も見下したりしないわけだからさぁ。というわけで、どっちもどっちってことで」


「……」


「とりあえず、自己紹介しようか。そっちの自己紹介は、さっき聞かせてもらったから、しなくていいよ」


 そう前を置いて、

 コホンとセキをつくと、


 少年は、ゴミスをとことん見下した目のまま言う。


「僕はゼノリカの天下、楽連の武士。督脈(とくみゃく)の15番――『亜門(あもん)』。生まれた時から、神族へと昇格することが確定している、ゼノリカ史上最高の資質を持つ超々々天才戦士さ。よろしく」


 ※ 今後、亜門は、アモンとカタカナで表記します。

   漢字で表記することもあります。


「超天才の僕がまだ天下にいるのは、単純に『歳(経験)』の問題。潜在能力的には、十分、天上の最上位クラス。だから、さっさと、天上に上げてくれればいいのに、って思うんだけど……パメラノ先生が、下で経験を積めってうるさくてさ。まいっちゃうよ、ほんと。頭が固い上司を持つと苦労させられる」

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