審判のアリア・ギアス。

審判のアリア・ギアス。


(……『この世界の現実』を私に教えてくれた貴様には、心から感謝するわ。無能でいてくれてありがとう。願わくば、このカスが本当に、最高品質の傑作でありますように)


 ミシャが心の中でそうつぶやいていると、


 シアエガが、とつとつと、


「わ、私は……私はシアエガ……コスモゾーン・レリックの……シアエガ……」


「だから?」


「この私を、これほどたやすく倒してしまうほどの……常軌を逸したバケモノよ……」


 そこでシアエガのオーラが淡く瞬いて、




「――強者は華。堅陣な魂魄は土――」




 ゆらゆらと、

 シアエガの光が強くなって、



「――審判のアリア・ギアス発動――」



 宣言の直後、

 シアエガのオーラがグっと深くなった。

 見えなくともわかる。

 明らかに、存在値が増した。

 先ほどまでのちっぽけな光ではなく、

 ――もっと、鮮やかな虹色。

 研ぎ澄まされた、狂気の虹色。




「――認めよう。強大なる挑戦者よ。私を超えてみせろ。もし、今の私をも超えることができたなら……その時は……真に、貴様の力となろう」




「……随分と上から言ってくれるわね」


 ミシャは、シアエガの言葉を鼻で笑ってから、


「貴様ごときに試されるほど、私は安くない」


 そう言うと、

 ミシャは、シアエガに対する『睨みの色』を消して、


「バロール、そのガラクタを支配して、キッチリと自分の力にしなさい」


 命令を受けると、

 バロールは、


「かしこまりました」


 自分の『表層』に出てきて、

 うやうやしくそう言った。


 そして、そのまま、

 バロールは、自身のオーラを開放し、


「コスモゾーン・レリック『シアエガ』よ。もう、お前の時間は終わった。今日この瞬間より、私の道具として、私の力になれ」


 そう言いながら、シアエガ(斧)に力を注ぎこんでいく。


 ビリビリと電流が走って、

 シアエガから放出されている『鮮やかな虹色のオーラ』がどんどん縮小されていく。


 ――だが、その途中で、


「私の試験を受ける資格があるのは、あの少女だ……貴様じゃない」


 シアエガのオーラが、

 バロールのオーラを押し返す。


「む……」


 シアエガの虹気がどんどん膨れ上がって、

 色濃くなって、歪んで、弾けて、

 バロールの魂魄をねじ伏せていく。



「ぐっ……ぅうう――ちぃ!!」



 だから、

 ついには、



「――ぶはぁっっ!! はぁ、はぁ……ふぅ……なかなかてこずらせてくれたが……しかしな、バロール……私の全力ならば、貴様程度をおさえるくらいワケないのだよ」



 再度、バロールの肉体が、シアエガに奪われた。

 意識を押さえつけられ、

 魂魄を縛られる。


 バロールを封じたシアエガは、


「……さて」


 ギロっとミシャをにらみつけると、


「それでは、試験を開始しよう」


 そうつぶやいた。


 そんなシアエガに対し、

 ミシャは、

 けだるげな表情を浮かべ、

 腕組みをして、


「何度も言わせるな。貴様ごときに試されるほど、私は安くない」


「プライドが高いな。ミシャンド/ラ。悪くないぞ。そうでなくては、私の使い手にふさわしくない」


「はしゃぐな、ポンコツ。貴様程度のガラクタが、偉大な神の弟子である私に、ふさわしいわけがないだろう。私にふわしいのは、もっとマシな道具。貴様じゃない」


「――その威勢、最後まで保つことができたなら、私は、真に、貴様の武器となろう」



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