ブチギレ。

ブチギレ。


「貴様一人がいくら強くなっても、時空の門は開かない」

「俺一人だけじゃダメって……また、えげつないことを言い出したな……」


「最初にハッキリと言っておこう。もし、貴様が、時空の門を開くことが出来なかった、その時は……」

「なんだよ。ためるな。鬱陶しい」




「――ゼノリカの全てを犯して殺す――」




「……」


「ゼノリカの天上に属する者だけではない。第2~第9アルファに存在するすべての生命に、限りない絶望と苦痛を与え尽くす」


「……」


「それがイヤなら、死ぬ気で挑め。ゼノリカと共にな。……言っておくが、私の『宣言』は、貴様がたまに使う『演出』などではない。貴様が届かなかったとき、私は必ず実行し――っ」


 そこで、ウムルの言葉が詰まった。

 一瞬で、わずかではあったが、しかし、体が震えた。


 一言で言えば、

 『センの怒気』にあてられて、

 普通にビビってしまったのだ。






「カスが……」






 センエースを包む熱が、グンと膨れ上がった。

 出力自体は上限である『1000』のままだが、

 内に秘められた膨大な熱量が尋常ではなく膨れ上がる。


「俺の宝に手を出したらタダじゃおかない云々……なんて脅しは意味がないから言わねぇ。『やる』と覚悟を決めているやつに『後悔』を先に立たせることは出来ない。そんなことは知っている。だから俺は、『脅し』でお前を止めようとはしない。……だが、これだけは知っておけ。俺を『本気で怒らせる』のはやめておいたほうがいい。テキトーなギャグをかましてチョケている間は、そこそこ慈悲深い神のつもりだが、本気でキレたら、このセンエースって男は何をするかわからない」


 ウムルは、


「……」


 一度目を閉じて、

 『一瞬だけとはいえ怯んでしまった自分』を叱咤・猛省し、

 短い深呼吸を挟んでから、

 ニィっと、黒く笑いなおして、


「……はっ。好きなだけ切れるがいいさ。貴様の感情など知ったことじゃない。あえて、もう一度言ってやる。貴様が、時空の門を開けなかったその時は……お前の宝を徹底的に凌辱する。絶対に、だ」


「……そうか。お前の覚悟、しかと受け止めた」


 そう言うと、

 センは、

 瞳孔をガン開(びら)いて、




「その覚悟と勇気に敬意を表し……少しだけ、俺の『怒り』を見せよう」




 そう宣言した直後、

 ウムルの視界からセンエースが消えた。


 ――消えたと脳が認識したと完全同時、


 ウムルの脳天に、


 ガツゥゥゥンッッ!!


 と、凶悪な衝撃は走った。



「がっはぁあああ!!」



 一瞬でウムルの頭上をとったセンの、

 衝撃的なカカト落とし。


 意識をハゲ散らかされて、グラっとするウムルに、

 センエースは続けて、




 ――裏閃流秘奥義 百華・神速閃拳――



「ぐがががががががががががががががっっっ!!」




 無詠唱で繰り出された裏閃流秘奥義――『百華・神速閃拳』、

 『繰り出された100の拳がウムルの全身をボコボコにするのにかかった時間』はコンマ数秒。


 おそろしい速度の、おそろしい連撃。

 とことんまで拳速を追求した先制技。

 無詠唱にすることで『発動するまでの時間』さえも削った、

 スピードという概念を極めた一手。

 いわゆる『でんこうせっか』の究極最果て技。



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